2006年1月16日 (月)

食のプロを刺激する店 第2回

hakusanshop0 刺激する店
「HAKUSAN SHOP 白山陶器東京ショールーム」 

刺激されている人
「レ・ストゥディ」 ホセ・バラオナ・ビニェスさん

 

 食材に触発されて新しい料理が生まれるのと同じく、器からインスピレーションを得て新しいプレゼンテーションや料理を考えるシェフは少なくありません。

 昨年10月から「レ・ストゥディ(“好きなことをする場所”の意味)」で新たな活動を開始したホセ・バラオナ・ビニェスさんは、スタイリストやフードコーディネーターも顔負けの器マニアとして知られます。撮影などで、スタイリストさんが持ってくる器のほとんどが「どこで売られているかわかる」というのです。
 
hakusanshop3  「器に限らず、デザインは大好きなので、時間ができると都内のショップを見て歩いてます。ふつうデザインがいいなと思っても、値段が高くて諦めることも多いんだけど、時々、定価でも安くてデザインのいいものが見つかる」
 と言うホセさんが、数あるショップの中で最近気に入っているのが、表参道にある「ハクサンショップ」。

 この店は長崎の波佐見(はさみ)町に窯を持ち、江戸時代から大衆向けの器を作る産地として知られます。隣接する佐賀の有田がお殿様へ献上する高級器の産地であったのとは対照的です。このショールームは2年前にオープン、全国で唯一の直営店です。

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ホセさんが「30年前にデザインされたものなんだけど」と言いながら見せてくれた灰皿は、灰が飛び散らないよう機能美を追究していく中で生まれたデザイン。

 





hakusanshop2 白山が器の「デザイン」に力を入れ始めたのは戦後すぐのこと。ショールームを訪れると、平凡ではないけれど、奇をてらいすぎない、生活が楽しくなる器の数々がすっきりと陳列されています。遠目から見ると、そのデザイン性の高さから「かなりお高いのでは……」心配になるのですが、値札をよく見ると3ケタのものからあり、プレートは1枚1000円台がメイン。思いがけない安さに、つい財布の紐がゆるんでしまいます。しかも30年前、40年前にデザインされたものだと知ると、ますます買い物魂に火がつきます。
 
 ホセさんの器選びは「白山」をはじめ池袋西武の「イルムス」、六本木の「リビングモチーフ」、都内の「フランフラン」など10数軒に及びます。店もバラバラ、購入した時期もバラバラですが、ホセさんの店に集まると、選ばれた器には見事な統一感が生まれ、セレクトショップのように自分の世界が作られています。「陶器は割れたらおしまい。だから値段にもシビアになるけど、妥協はしたくない」。厳しい条件をクリアした器たちは、昨年末からスタートしたレストランで現在、活躍中です。

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2000年にグッドデザイン賞を受賞した「ゆるり」シリーズの皿。真ん中がぷっくりと隆起し、今にも溶け出しそうな危うげなフォルムがモダンで印象的です。





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白山の器は百貨店やカフェ、セレクトショップなどでもすでにお馴染み。特に有名なのは1958年にデザインされグッドデザイン賞を受賞した「G型醤油さし」です。「白山」の名前は知らなくても、一度は見たことのある人も多いはず。

HAKUSAN SHOP 白山陶器東京ショールーム
東京都港区南青山5-3-10 フロムファーストGフロア●Phone03-5774-8850
●11:00~20:00●年末年始休
アクセス:表参道駅から徒歩10分。 

chefレ・ストゥディ

東京都千代田区内幸町2-2-2富国生命ビルB2
●Phone03-3597-0312

ホセさんは器選びだけでなく使い方のバランス感覚も絶妙。違う店で買った物同士でも、見事にコーディネートしてみせます。 



*この連載は、次回から新雑誌へ引っ越します。どうぞお楽しみに。

TRIPPA通信+1よりINFORMATION
PATISSERIE from Paris >>>
今週は、「ジャン=ポール・エヴァン」のリポートをお送りします。

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2005年12月 4日 (日)

新連載 食のプロを刺激する店

気分をリフレッシュしたり、自分をリセットするための店……、
この連載では、食のプロたちが自分へのカンフル剤として訪れている
隠れた名店をご紹介して参ります。

maru3 食のプロを刺激する店 第1回

  刺激する店      「まるます家」 

  刺激されている人 「ロックフィッシュ」 間口一就さん

 銀座のバー「ロックフィッシュ」の間口一就さんが「しびれます……」と語尾も消え入るほど絶賛して止まないのが東京・赤羽にある居酒屋「まるます家」です。ご存知の方も多いと思いますが、赤羽は24時間、お酒の飲める町です。そして粋な飲み方を心得た紳士に出会う確率が、非常に高い町でもあります。
 
 まるます家の営業時間は朝9時~夜の9時まで。間口さんは毎週日曜の午後2時頃、訪れます。間口さんがこの店に魅せられたのは去年の秋から。
「お姉さま方の接客の妙、メニュー札のセンス、値付けが良心的なところ。ここに来るといつも大衆酒場の神様がいらっしゃるな……って思うんですよ。だから自分もあやかりたいと思って、ほぼ毎週来るようになりました」

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女将さんのひろこさん(写真左から3人目の方)を中心に、接客を担当しているお姉さま方に、ずらり並んでいただきました。愛らしい笑顔としびれる会話に、つい長居してしまいます。

 お姉さま方の接客を実況中継するとこんな調子です。
「ハイ、かわいこちゃん2つ入りました!」
……これはこの店のメイン酒「富久娘」のオーダーが2本入ったという意味です。他にも、ざわめきの中から、ぽつりぽつりとですが、胸がしめつけられるようなしびれる会話が時折拾えます。

maru2  この店には30~40年通い続けている常連さんがたくさんいらっしゃいます。お客さんのほうも心得ていて、常連面する人は誰もいません。新参者にも居心地がいいわけです。
「お客さんも理想的。こんな店になるにはどうすればいいんだろう……」と、間口さんの憧れの気持ちは、来るたびに高まります。
                        メニュー札「スッポン生血」には「生血」にだけ、
                        さりげなく波線が引いてあったり、ウナギの骨
                        「カルシューム」は、ただ「カルシウム」と書くよ
                        りも俄然、効き目がありそうです。


maru6  ところで、まるます家には小憎らしいほどかわいいものがいくつもありますが、そのひとつにお土産用の鰻弁当があります。小ぶりの赤いプラスチックの弁当箱に詰まったそれは、「ロックフィッシュ」で間口さんが作るおつまみに共通した世界を感じます。そういえば営業時間もかなり影響を受けているような……(ロックフィッシュの営業時間は欄外でご確認いただけます)。

お弁当は1000円~。赤いプラスチックの箱にみっちり詰まったご飯とウナギは、見ため以上に食べ応えがあります。働いている皆さんのお肌が男女共に美しいのはウナギ効果ですね。


 日々、模索&前進を続けられるのも、「師」となる店があればこそ。このシリーズでは、食のプロたちを刺激している店を尋ねて参ります。どうぞ、お楽しみに!

まるます家
東京都北区赤羽1-17-7●Phone03-3902-5614
●9:00~21:00LO 21:30閉店●月曜休
アクセス:赤羽駅から徒歩3分。

maru0ロックフィッシュ
東京都中央区銀座7-2-14-2F
●Phone03-5537-6900●平日15:00~翌2:00(ハッピーアワー15:00~17:00)土曜15:00~23:00、日曜・祝13:00~22:00●無休

「ロックフィッシュ」の間口一就さん。まるます家に通い始めて早1年。「なるべく2時間で帰ろうと思うんですが……」。昼から気持ちよく酔える店は貴重です。

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