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2010年12月 8日 (水)

お好みはどの世代、どのお酒?(2)

日本酒ジャーナリストの山同敦子さんと、「鈴木三河屋」大熊潤さんとのテイスティングコメント第2弾。続いては、今、もっとも勢いのある!? 30代後半のお酒です。

―30代後半―
「十四代」の高木顕統氏はじめ、40代の造り手に刺激されて酒造りを始めた世代。味わい、香り共にフレッシュで力強い酒が多い。

【貴 純米吟醸 山田錦50
山同:永山さんは今35歳ですが、25歳のデビュー当時から「貴」を飲んでいます。当時はまだ「若い人が造っているな」っていう荒削りな部分を感じて、ただそれも決してマイナスの意味ではなく、とても将来を期待させるインパクトのある味だったのだけど、最近はとても洗練されてきています。やわらかい旨味があり、ほどよいきれいな酸がある。その酸も、わかりやすく主張するのではなく、バックボーンにある感じで。年々完成度が上がっていて、ずっと飲み続けられるお酒になってきました。すごくいい自然派ワインみたいに。
大熊:最初の香り、日本酒らしいふくらみ、後切れのよさ、3拍子揃っていますね。永山さんはフェイドアウトする酒が造りたいっておっしゃってますが、まさにそう。じっくり向かい合って話せるお酒です。
山同:永山さんて、見た目は柔道家みたいな体育会系なんだけど、知性も備えているし、とても純情。文武両道な、万人の人気者って感じ。
大熊:酒の味もとても素直でのびやか、永山さんの人格がそのまま表れている感じがしますね。

【石鎚 純米吟醸 緑ラベル
山同:ジューシーですよね。みずみずしく滑らか、果物の熟れるちょっと前のちょうど食べ頃って感じ。ここは兄弟蔵で、弟さんが麹の担当、お兄ちゃんがもろみの管理や蔵全体を見て、お兄ちゃんの奥様が分析を担当。この3人は東京農大出身です。社長のお父さんはお米を蒸しているんです。
大熊:カチッとしているけど柔らかくて若いまま、ダレていない。旨味やコクがありますが、爽やかさもあります。引き締まったスタイルの良さを感じますね。モダンスタイルで躍動感がある。
山同:マグロではなくて、イカとか鯛、甘味のある白身の刺身、貝類とぴったり合います。

【山形正宗 純米吟醸
山同:“名刀正宗”って言われるくらい、切れ味がスパッと気持ちのいいお酒です。硬水で仕込んでいるからでしょう。雄町らしいぽっちゃりした感じを内包しながらも、カチッとしまっている。水戸部さんは、ハートは熱いけれどクールな方。丸紅に勤めていたこともあり、海外進出の夢もあったりして、酒造りと共に経営にも注力されているデキる男なんです。
大熊:いい筋肉がついたアスリート系って感じです。モダンで今の酒ですよね。おいしさのきれいなトライアングルがありつつ、プラスαの魅力がある。好きですね。ちょっと杉の香りがするのは、新築した麹室の材質である杉の香りが、若干溶け込んでいるのかもしれませんね。

【而今 純米吟醸
大熊:香り、甘味、酸味のバランス、後口のきれいさ、インパクトの強さ。とにかく今人気がありますね。全国で18軒の酒屋としか取引がなく、「而今入荷しました」って貼り紙出すと、行列ができるくらい。
山同:香りも旨味も豊富でジューシー。でもお尻は重くない。くびれのあるボディって感じ。香りが華やかで女性的ですね。最近は、以前に比べてだいぶ香りも旨味も落ち着いてきていますね。大西さんの奥様は、新潟の蔵元の娘さんなんですが、このお酒を飲んで、「こんなに甘いのに後切れのよいお酒があるの!?」って惚れ込んだのが出会いのきっかけなんですよ。

【大那 純米吟醸

山同:柑橘系の香りと甘味がありますね。キュートな“みかんちゃん”て感じ。後でみかんに似た渋味、苦味も感じる。これは五百万石由来のものでしょう。
大熊:酸の量が多い。味に色がある感じですね。まさにオレンジ色。モダン和食とか現代居酒屋とかで今すごく人気です。
山同:確かに、マヨネーズとか唐揚げと合いそう。刺身でも回りにピーナッツとオリーブ油をかけたお料理とか。
大熊:デザートでも、オレンジのムースにチョコレートクリームとかよさそうです。

【七本槍 山廃純米
大熊:西日本らしい熟成系です。しっかり旨味を溶かしていて濃い。
山同:すごみのある野武士の印象。燗にすると映えるお酒。鮒ずしと合います。カラスミやブルーチーズなんかともいいですね。赤ワインに共通するニュアンスがあるから、欧米で人気があるんですよ。

TASTER
●山同敦子さん
編集者として全国の酒蔵を訪問した際に感銘を受け、独立。日本酒蔵、焼酎蔵や海外のワイナリーの取材を続けている。著書『愛と情熱の日本酒 魂をゆさぶる造り酒屋たち』(ダイヤモンド社刊)には、今の日本酒の担い手の姿が鮮やかに描かれて、感動必至! 3月に同書の改訂版をちくま文庫から出版予定。他、著書多数。

●大熊 潤さん
日本酒と焼酎の店「鈴木三河屋」取締役。同世代の造り手を中心に、質の高い酒を全国から厳選し販売。蔵元へも積極的に足を運び、造り手や飲食店からの信頼も篤い。
(東京都港区赤坂2-18-5 TEL:03-3583-2349)

2010年 12月 8日 今月の『料理通信』 |

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