読書の秋到来!おいしい小説のススメ。
■食&文学好きの皆さん、食欲と読書の秋にぴったりの書き下ろし小説がお目見えしました! 角川春樹事務所から刊行された『ゴチソウ山』(山田 健・著)、『みをつくし料理帖 花散らしの雨』(髙田 郁・著)の2作品です。
『ゴチソウ山』の舞台は、現代の田舎町。今や日本全体の緊急課題ともいえる「町おこし&里山再生」への道のりを、アイデアとユーモアたっぷりに描いた小説です。実は、著者・山田健氏は、サントリー環境活動部の現役部長。「天然水の森」活動を推進する有識者でもあるのです。「すっかり失われてしまった豊かな自然を“根本から”取り戻したい!」「足取りが重い行政のお尻を叩きたい!」「自然との共生を観光誘致に結び付けたい!」。そんな、里山再生に付随する様々な問題・課題解決の糸口となるヒントが、物語のそこかしこに散りばめられています。
中でも、食いしん坊の私にとって印象的なのは、「炭火でさっと炙った、自家製イノシシバラ肉のベーコン」「青竹を使った、飯盒炊さん」など、随所に登場する料理の数々。香りや味わいを想像するだけで、グビッと酒が飲めそうです。山にはたくさんのゴチソウがある! 自然を大切に育て、上手に共生していくとそんな食生活も可能になるのだなぁと、心から納得。都会生活では味わえない自然と人智による恵みの味が、各地の里山で増えていったらスバラシイと思いました。
そして、もう一つの作品『みをつくし料理帖 花散らしの雨』。こちらはベストセラーとなった時代料理小説『みをつくし料理帖 八朔の雪』に続くシリーズ第二弾です。
大坂で生まれ育った女性料理人・澪(みお)。天涯孤独の彼女が、江戸の町で様々な苦難を乗り越えながら、上方料理を提供し研鑚を積んでいく、その姿を描いた人間ドラマです。体裁は短編仕立て。各編の核になるのはもちろん料理で、それらは、シンプルで潔く、そして上品という、和食の醍醐味がきゅっと詰まったなんとも美しいものばかり。物語の展開にハラハラしつつも、料理や食材のくだりにも目が釘付けになります。
そして! 巻末には付録「澪の料理帖」があり、澪のスペシャリテを自分で作れるのも、これまた大きな魅力です。『みをつくし料理帖』シリーズは今後も随時刊行予定とのこと。未読巻が増えないうちに、お読みになることをおススメします!
秋の夜長においしい小説、皆さんも是非味わってみてください。(watanabe)
2009年 10月 23日 INFORMATION | 固定リンク