スイーツ特集下見レポート
洋菓子はなぜ、ほっとするのか?
■好評発売中の『料理通信』9月号スイーツ特集は、「昔懐かし日本の洋菓子」がテーマのひとつ。
下見に挙がるお店のラインナップが、いつもとちょっと違いました。「東京會舘」「帝国ホテル」「柏水堂」「アルプス洋菓子店」「アンヂェラス」「ウェスト」「コロンバン」……わくわくしますね。購入するアイテムは、ショートケーキ、モンブラン、シュークリーム、アップルパイ、ロールケーキ。 手分けして買い求めてきたケーキをテーブルに並べて、さぁ、一斉に試食です。
どれも同じように見えていたショートケーキのデザインが、お店によって随分違うことにまず驚きです。イチゴのてっぺんをカットしてクリームが詰めてあったり、スポンジ生地がやたら厚かったり、トップにイチゴが3つも (季節柄、良いイチゴが手に入らないとパティシエさん達から聞いていたので、「うぉぉ、このイチゴ、どうやって確保してるんだろう」と思いましたね) のっていたり!
さすが、帝国ホテル、イチゴが入手しにくく、メロンショートに切り替える店も多いこのシーズンに、イチゴが3つと大盤振る舞い。モンブランも、クリームの下がスポンジの店もあれば、タルトの店あり、ロールケーキ形の店もあって、思いのほかバリエーション豊富。黄色いのは共通だけど。
面白かったのは、食べる側のケーキとの向き合い方の違いです。みんな、「このタイプ、好き」「これ、好みじゃないな」――自分の“好み”で判断するんですね。
アルプス洋菓子店です。ここはスポンジ比率が高いですね。多くの日本人が思い描くショートケーキの姿ではないでしょうか。
バリバリのフランス菓子の試食の時は、「判断」ではなく、無意識に「学ぶ」姿勢になっています。自分の知らない技術で、自分の知らない味の世界が作り上げられていると思うから、「これは何?」「何がポイント?」「どういう状態が良いと言えるの?」と自分の中で探りながら食べていく。「これをおいしいと思う自分は間違ってないよね?」と自問自答しながら食べている。きっとどこかに、異文化と向き合っているという気持ちがあるのでしょうね。
その点、洋菓子は紛れもなく日本人の味。正々堂々、自分の好き嫌いが言えてしまう安心感がある。
柏水堂製。ごめんなさい、これは食べかけです。
食べる前は三角形です。
比較的きめの粗いざっくりとしたスポンジにはキルシュが効いています。
「洋菓子って、ほっとするよね」――特集をつくり上げていく間、何度もスタッフの間で聞かれた言葉ですが、見た目も味もやさしくて柔らかくて「ほっとする」だけでなく、自分たちの手のうちにあるという「ほっと」でもあるように思います。
しかし、いざ取材が始まると、「へぇ~、こんな作り方していたんだ~」とまるで未知の世界だったのは、洋菓子のほうなのですが。
詳しくは『料理通信』9月号をご覧ください。
下見レポートは、「新・スイーツの心得」でも。(kimijima)