和久傳の「笹ほたる」は、お茶スイーツのお手本です。
■「お茶スイーツ」ブームですね。
9月号スイーツ特集に向けて下見の日々ですが、目にとまるのは「お茶スイーツ」ばかり。編集部に届くプレスリリースも「お茶スイーツ」比率高しです。
「抹茶スイーツ」とも違う。使われているお茶が多様化しているのです。
プーアル茶だったり、烏龍茶だったり、ジャスミンティーだったり、ほうじ茶だったり、煎茶だったり……。前号の『BRUTUS』がお茶特集を組んでいることからもわかるように、まず「お茶」自体がブームの気配。かつ、スイーツ界がお茶を積極的に使いこなしているんですね。
そんなこんなで、お茶スイーツを連日試食しているところへ、偶然にもお茶スイーツが届けられました。和久傳さんの「笹ほたる」です。この夏の新作です。
宇治の抹茶と備中白小豆で作られる抹茶水羊羹の中に、ほうじ茶寒天があしらってあります。添付のしおりに従ってカットすると、笹の茂みに遊ぶほたるの姿が浮かび上がるという趣向です。
濃茶を飲んだ時に感じる“苦味、甘味、旨味、青々とした香り”が渾然一体となって鼻の奥を包み込む「茶」の味わいが、ほのかな甘味の中に生きている……。輝くほたるのほうじ茶寒天は、昔ながらの寒天らしいコキコキとした“日本伝統の食感”で、「和菓子の正統」を感じて余りあります。
フランス人も抹茶を使ってお菓子を作る時代です。抹茶と緑茶は「グローバル・アイテム」になったと言えるでしょう。うれしい反面、負けてはいられないと思うのです。
「お茶の使い方はやっぱり日本人には敵わない」と言わせなければ。
和久傳の「笹ほたる」はまさにお手本。味も、食感も、趣向も、菓銘も、これぞニッポンのお茶スイーツです。(kimijima)
写真上が「笹ほたる」。真緑の中にほたるが浮かび上がります。写真左は、ささのか菓子「希水」。笹とオオバコから作られるみずみずしい透明なお餅。