狐野扶実子さん、生産者に会いに行く。
■パリの三ツ星、アラン・パッサールの「アルページュ」でスーシェフを務めているのは日本人女性らしい――との噂が聞こえてきたのは、2000年頃でした。
その女性、狐野扶実子さんが、パリの「ル・コルドン・ブルー」を出てパッサールの店に入り、スーシェフを任されるまでになったと聞いて、興味をそそられたのを覚えています。「パッサールは彼女の中に何を見出したのだろう?」
やがて、狐野さんは、出張料理人として注目を集める存在になります。フランス政財界の要人に請われて、彼らの邸宅でのランチやディナーを、たった一人で請け負うようになるのです。素材を慈しんで作る、簡潔にして洗練された彼女の料理は、仕事も物も人も常に最上級に囲まれて過ごす人々の心を捉え、世界中からオファーが寄せられました。
その後、パリの名門「フォション」のディレクターを務めた後、ニューヨーク生活を経て、この春、帰国。日本での仕事をスタートさせるに当たって、狐野さんが望んだのは「生産者と会うこと」でした。
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『料理通信』は6月6日発売の7月号で2周年を迎えます。
2周年にふさわしい特集を組みたいけれど、それは何?……考えた挙げ句、私たちが選んだのは、「インディペンデントな生産者たち」。利潤追求を第一義にしたマーケティング型の企画商品で溢れ返る時代です。だからこそ、自分の信じる味を求めて、人生を賭けて、自力で食材づくりに取り組む人々を紹介したい、と思いました。「インディペンデント」、なんて素敵な言葉なのでしょう!
そうだ、狐野さんに彼らの現場を訪ねてもらおう!
GWの真っ只中、狐野さんは、牛に会い、豚に会い、麦畑の風に吹かれて、そうして、6つの料理を作り上げました。正真正銘、生産者と食材とのふれあいから生まれた料理です。その味は、噛む度に、飲み込む度に、カラダの中を風が吹き抜けていくかのような清々しさに満ちていました。むずかしい調理過程は何一つありません。“食材自身が心地よく感じる”ように調理する、ポイントはただその一点です。
「生産者の人たち、どうでしたか?」。狐野さんに尋ねたら、「日本人がみんなこんな人たちだったら、どうしようかと思った(笑)」。大丈夫ですよ、この人たちはスペシャルですから。多くの日本人はもっと普通ですから。それくらい今回登場する生産者の生き方、ハンパじゃありません。胸がいっぱいになります。(kimijima)
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『フミコのやわらかな指
料理の生まれる風景』(朝日出版社)
狐野さんの人柄やこれまでの歩み、そしてどんな料理を作るのかが垣間見える本です。
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