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2005年11月10日 (木)

フードとデザイン

今、料理界でコラボレーションといえば、「化学者と料理人」が最先端の組み合わせ。ですが、東京がデザイン一色に染まった11月の第1週、「デザイナーと料理人」のコラボレーションにドキリとさせられたので、その報告を。

■Fresh Touch
Design Tide in Tokyo 2005」の一企画として、11月2日から5日間に渡り開催されたフード・デザインイベント「Fresh Touch」。「21世紀の狩猟と採集」をテーマに、日仏クリエーター10人あまりが参加した。発起人の1人であるサラー・カリエール=シャルドン氏によると、フランスではここ数年、フード・デザインは旬なムーブメントとなっているが、今回のイベントは、より包括的なアプローチ(彼女曰く“culinary(料理) design”)を試みたという。

FreshTouch1
色彩によって5つの空間に仕切られた会場。テキスタイルのパーティションは、日本の壁代(かべしろ)や暖簾からインスパイアされたという。建築家エマニュエル・ムホーの作品。

会場となった東京・表参道のラユンヌ・ギャラリーは、色切(shikiri)と名づけられた鮮やかな色のテキスタイルで空間を分けられ、各空間は、「採集(前菜)」「狩猟(肉)」「釣り(魚)」「飛翔(デザート)」「泉(水)」というテーマに沿った5つのインスタレーションで構成される。

FreshTouch2 入口すぐは、「採集(前菜)」のインスタレーション。春の野原に咲いたシャンパングラスと「mange moi(ワタシヲタベテ)」と印刷されたブドウの葉が生い茂る空間を出発点に、色彩の迷路の中を肉、魚を探して歩き、疲れたら泉で喉を潤し、最後はデザートで夢見心地に、というコース仕立てになっている。

「シャンパーニュ地方のピクニックへの招待」と題した「採集」のインスタレーション。フードデザイナーはパリのBIOレストラン「R'Aliment」を手掛けたフィリップ・ディ・メオ。

FreshTouch3

FreshTouch4

チョコレートのアロマの香る「飛翔」の空間。白い風船の紐に吊り下げられたクリアケースの中には、マカロンを模した繊細なチョコレートが。





FreshTouch5
テーマ毎にフードデザイナー1人、料理人もしくはパティシエ1人がチームを組んで作品を作り上げていくのだが、完成させるのは観客である私たち。 なぜなら「Fresh Touch」では、探したり、摘んだり、剥がしたり、釣ったりという行為を経て食べ物に到達することで、人間の中に眠る「狩猟」と「採集」という資質を見つけ出そうと試みるからだ。

チョコレートのムースとスプーンを滑るように抜き取る。滑らかなムースの食感を予感させる仕草。

では実際、自分の中に狩猟と採集という資質を見出したかというと・・・・・・。

FreshTouch6
タイムやラベンダーのアロマが香る「狩猟」の空間。壁際に吊るされた肉のカーテンの美しさにうっとりするも、手前のテーブルには怪しく光る裁ち鋏が・・・。

■21世紀の狩猟採集者になってみて
それは「狩猟」のコーナーでのこと。「ル・シズィエム・サンス」のドミニク・コルビシェフと、フランス芸術デザイン学校でフードデザイン教授を務めるMarc Bretillot氏によるインスタレーションのひとつが、「肉のカーテン」だった。生ハムとサラミをセロハン紙で挟み帯状に吊るした様子は、熟成中の狩猟肉を思い起こさせる。その肉のカーテンを裁ち鋏で切り取り、アミガサ茸のバターを塗ったバゲットにのせて食べるのだが、その洗練された味わいとは対照的に、そこに至るまでの行為に思わずドキリとさせられた。

FreshTouch7 (左)ドミニク・コルビシェフ。「デザイナーとコラボレートしたのは初めてだけど、すごく刺激になった」と満足気。

FreshTouch8












(右)Marc Bretillot氏。「狩猟」をテーマにコルビシェフが料理を考え、Bretillot氏はそれを受けてイメージを膨らます。




手にずっしり重たい裁ち鋏で、肉をザクリと切り取る。その瞬間、自分が今食べようとしているのは、「洒落たパーティフード」でも「フランス料理」でもなく、「動物の肉」であることを実感してしまったのだ。そこで血が滾れば立派な狩猟民族でしょうが、ふいに鼓動が早くなった私はやはり農耕民族。

しかし、生々しく感じた「動物の肉」が、縦に薄く切ったバゲット、アミガサ茸のバター、生ハムと重ねた途端に「洗練された料理」に変わる。その境界に立ち会った時、ブッフェスタイルでは決して味わえない「料理人の心理」まで味わったような気がして、またまたドキリとさせられたのでした。(sone)

FreshTouch10 コルビシェフが「どうしてもやりたかった」というシャブロ(狩りから戻って冷えた体をスープを飲んで温める。その時、残り少なくなったスープに赤ワインを加えて最後ま で飲み干す田舎風スタイル)を、Bretillot氏は野菜と鶏ガラのブイヨン、赤ワインを 別々のプラスチックバックに入れて吊るし、チューブを通してガラスのコップ(無骨なスープ皿に口をつけるように、口部をわざと歪めてある)に注ぐ、という形で表現。肉の内臓や血管を連想させるインスタレーションだ。


FreshTouch9 今回のイベントの立役者。キュレーターのサラー・カリエール=シャルドン(左)とアート・ディレクターのヴィルジニー・ラヴェ。共に東京在住。






FRESH TOUCH © Sarah Carriere- Chardon + Virginie Lavey
Photographer :Kenzaburo Fukuhara

2005年 11月 10日 EVENT(食の世界の様々なイベント) |

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