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2006年4月10日 (月)

#14 アルノー・ラエール

  洗練の中に手のぬくもりを感じさせるラエールの菓子

Img_0187  モンマルトルの丘、我が家から徒歩7~8分の距離のところに、「アルノー・ラエール」がある。抑えたオレンジ色のモダンな店構え。ごちゃごちゃと小さなアパルトマンが肩を並べる私の住むアベス駅付近とは違って、コーランクール通り界隈は、高級住宅が立ち並ぶ閑静な町並み。客層もよく、客足もひっきりなしだ。
 
 オーナーパティシエのアルノー・ラエールは、「ペルティエ」を始め、パティスリーのエコール(学校)といわれるような店で修業を積んだが、彼にとって大きな存在は、「フォション」のピエール・エルメだった、と言う。エルメに学んだのは、「先入観を捨て去り、開かれた発想を持つこと」だそう。型を使わずに作った、不揃いのタルトをラエールが出した時は、手のぬくもりを洗練の一要素として閉じ込めたような出来具合で、衝撃的だったのを覚えている。
 
 ところで、ピエール・エルメの下で働いたパティシエの作るパイ生地は、どれも群を抜いている。が、アルノーのパイ生地は、その中でも文句なくおいしい。エルメが広めた、パート・フィユテ・アンヴェルセの方法をとっているからか。パート・フィユテ・アンベルセは、“パイ生地の逆折り込み”とでも訳そうか。普通は、小麦粉などの入った生地に、バターをのせて折り込んでいくが、エルメは逆の方法、つまり、バターの中に生地を折り込んでいくという方法をとった(そのバターの中にも、小麦粉を入れ安定させている)。こうすると、パイ生地の層が持ち上がるように焼き上がるので、空気がしっかりと入り、さくさくとした口当たりで、また同時に口溶けの良い味わいになる。
 
 でも、ラエールのバター使いは、やはり天性のものかもしれない。そう思うのは、彼の作るクイニー・アマンをいただく時。クイニー・アマンはブルターニュ地方の郷土菓子で、ラエールはブルターニュ地方出身だった。イースト生地に、有塩バターと砂糖を折り込んで作る、ある意味で、パイ生地の変わり種で、菓子というよりパンだろう。その生地を、バターとグラニュー糖をまぶした型に入れて作るので、焼き上がりの表面はキャラメル状に。濃厚な有塩バターの味わい、さくさくとしたグラニュー糖とふんわりと柔らかな生地の、おいしさがぎゅっと詰まった拳大で、朝よりも午後、コーヒーよりも紅茶が似合う、パン菓子なのである。
 
Img_0218  ラエールの作るチョコレートも評判で、プラリネ入りの板チョコレートは、2005年のサロン・ド・ショコラで賞をもらっている。塩味のプラリネ、砕いたカカオ豆入りプラリネもあるが、私が気に入っているのは、プラリネに、ピスタチオの生地を練り込んだもの。粗いピスタチオの粒に、手作りのおいしさを感じるのである。
 
 今年東京で行われたサロン・ド・ショコラには行けなかったラエールだが、「パリ・セヴェイユ」の金子美明氏が、自分のパティスリーを店で再現してくれているのがとても嬉しい、東京を近い都市に感じる、と言って喜んでいる。金子氏の作る塩バターのキャラメルクリームもおいしいと、人づてに聞いた。日本に次回帰国した折には、是非足を運んでみたい。



Arnaud Larher
53 rue Caulaincourt 75018 Paris
Tel:01.42.57.68.08(国番号33)


「パリのパティスリー案内」は、今回で終了します。
引き続き、『料理通信』-SWEETS EXPRESS-で伊藤文さんの連載が始まります。どうぞお楽しみに!!!

2006年 4月 10日 |

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