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2006年2月20日 (月)

#8 フォション -前編-

現代の客が何を求めているかを読み、その先を創出する

IMG_0266  1886年創業の高級食材店「フォション」。マドレーヌ広場に面して建つ、一目でこれとわかる華やかな外観で、昔から、フランスを始め世界中のグルメたちを引きつけてきた。
 
 一昔前の、素敵なエピソードをご紹介したい。ある老夫婦が金婚式を祝うのに、他には滅多にないような思い出に残る2人だけのディナーを考えたという。それは、パリのセーヌ川に架かるある橋の上にテーブルを設定すること。その橋には半円形の突出口がいくつかあって、そこは、恋人たちが腰掛けるのにぴったりのベンチになっている。
 老夫婦は、パリの高級食材店に頼み、橋の上のテーブルセッティングとディナーを用意してもらった。そこに通りかかるは、パリ警察。立ち退きを命じようとしたが、金婚式のための特別なディナーと聞いて、快く承知したという。粋な計らいはフランスらしい。
 ひらり舞うテーブルクロス。蝶ネクタイのギャルソンがシャンパンを抜き、エッフェル塔を眺めながら乾杯をするひとときは、永遠のように美しかったに違いない。このディナーを引き受けた高級食材店がフォション。お客の依頼に100%応えるというのが、店のモットーなのである。
 
 こうした高級食材店としての名声に加え、ピエール・エルメの登場によって、パティスリーとしての名も高くした。エルメがシェフ・パティシエに就任したのは1986年。ちょうど100周年を迎えた時。97年まで務めたが、この間たくさんの名だたるパティシエを輩出したのは知られるところだ。今、ボン・マルシェの「デリカバー」を指揮するセバスチャン・ゴダールがエルメ後のシェフを務め、01年退職して、その座をクリストフ・アダムに譲り、アダムが現在のパティスリー部門を指揮する。
 
 2006年、フォションは120周年を迎えた。この記念すべき年を前に、昨年は、ちょっと変わったシリーズのパティスリーを発表して話題になった。何でも“スプーン入らずのパティスリー”がテーマだったそう。サンドイッチボックスに入った“Club Cake”と、シガーケースのような細長い箱に入った“Tout de suite”の2種。Club Cakeは、チョコレート、フランボワーズ、ピスタチオ味の3種フィナンシエのサンドイッチ。Tout de suiteは、箱の端を押すと、パティスリーが飛び出して、手も汚さず食べられる、細長い形のタルト風サブレだ。Tout de suiteは、購入したら、Tout de suite(すぐに)食べられる、から命名されたのだろう。
 いずれも、歩きながらでも食べられるという、新しい食べ方を提案。現代の客が何を求めているかを読み、その先を創出するというあり方に関しては、今も昔も変わらないのかもしれないが、今はスタイルを重視しているようである。


Fauchon
place de la Madeleine  75008 Paris
Tel:01.70.39.38.00(国番号33)

2006年 2月 20日 |

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