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2009年12月25日 (金)

シャーベット状のケルナーの粒

鶴沼の畑に雪がしんしんと降るなか、今村農場長がケルナーの区画に連れていってくださいました。ここは、春、夏、秋と何度も訪れている区画。そこには今まで訪れたときとはまったく違った世界が広がっていました。

Photo_6

美しい……
 
Photo_5 北海道ワインの営農部の齋藤浩司さんでさえ、その光景に見とれていました。ここの区画は毎年、貴腐、雪摘みケルナー(レイトハーベスト)といったワインを造るため、雪が降っても、収穫せずに、ブドウの糖度が上がるのを待つそうです。収穫の見極めは?と今村農場長に訪ねると
「根雪になってしまう雪か一度は融ける雪かの見極め。一気に根雪になってしまい雪にすっかりも埋もらせてしまった年もあるけれど、収穫後に剪定作業をしなければいけないし……。天気図を見たり、山の積雪具合や雲の動きを見たり、春からずうっと天気を予想しながらの作業だよ」

ただこのように寒さが厳しくなっても、ブドウ樹に房をつけていくのは樹にも負担がかかるようです。そのため、この鶴沼より寒さがさらに厳しい富良野では、ケルナーでアイスワインを造るのを断念して、寒さにより強い山ブドウとの交配種、「ふらの2号」でアイスワインを造ることにしたのです。微妙な気温の高低で、適する品種も変わってくるのですね。

Photo_2これが半分凍ったケルナーのブドウの粒。この日は、雪の結晶もきれいに見えました。今村農場長の許可を得て一粒口の中に入れてみると、何と半分、凍っていました。
「あっ、シャリシャリしてる!シャーベットみたいです」
果肉がしだいに溶けて、何ともいえない風味と甘みが広がります。でも後口は爽やかで伸びやかな余韻がたまりません。なかには貴腐がついている粒もありました。
貴腐ブドウでワインが仕込めるのは3年に1回くらい。そのほかの年は「雪摘み」(レイトハーベススト)にしているそうです。

Photo_4この後、鶴沼ではさらに雪が降り積もり、毎年12月の中旬頃には、ブドウ樹はすっかり、雪に覆われてしまいます。しかしそのおかげで、凍害に遭わずに済むそうです。今村農場長の話しでは、最近、雪が降り積もるのが遅くずれ込むようになっているとか。いたずらに温暖化を叫ぶつもりはありませんが、できることから、地球に負荷をかけないようにしていきたいものです。

●北海道ワイン
www.hokkaidowine.com/

●北海道ワイン鶴沼ワイナリー
http://www.hokkaidowine.com/contents/production/vineyard/index.html

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2009年12月14日 (月)

厳寒の剪定作業

ほかの品種に比べて収穫の遅い黒ブドウを仕込んでいる造り手たちも、ようやく先週半ばから終わりにかけて、発酵の終わったワインをプレスして、樽に移し終わったようです。2009年の仕込みもほぼ終了です。

Photo_5造り手によっては今の時期に堆肥を撒く人もありますが、来年の剪定作業まで、ブドウ園は比較的静かなときを迎えます。しかし、北海道など積雪の深い地域は別。雪が積もる前になんとしても剪定作業を終えなければなりません。11月、そういった地域の収穫が終わった造り手たちに電話すると、たいてい、畑で剪定作業の真っ最中でした。

P1010796 「北海道のワイン造りを理解するのなら、雪の中の剪定作業を見にこなきゃだめだよ」とは、以前から北海道ワインの今村農場長に言われていたのですが、今まで実現せずにおりました。そして、今年初めて雪の鶴沼ワイナリー(醸造所がないのに、なぜかワイナリーという名前がついている)を訪ねました。滝川まで電車で出ると、北海道ワインの営農部の齋藤浩司さんが駅まで迎えに来てくれています。

鶴沼に着いてみると、前日から降り始めた雪がかなり積もっています。ある栽培家をして8月後半は30年に一度の好条件と言わしめた2009年ヴィンテージですが、北海道だけは例外。各ブドウ園とも収穫量はかなり減少傾向です。今村農場長のお話では、2009年のヴィンテージのブドウの状態を考慮して、鶴沼では例年とは少し異なる剪定方法をとっているとのこと。ブドウ園をはいって、剪定作業をしているというセイベル9110の畑まで連れて行ってもらいました。

Photo_2雪がしんしんと降り積もるなか、みな、黙々と剪定作業を続けています。パチン、パチンと剪定ばさみの音が鳴り響きます。なんともいえない光景でした。一言で言い表すのが申し訳ないような。思わず息をのみました。こうした作業に支えられて北国のワイン造りは成り立っている。北国のヴィニュロンたちがこうした仕事を毎年続けている……。
皆さんは、午前中は朝7時から12時まで。午後は13時から16時まで、この剪定作業をするそうです。今村さんのお話では、これだけフルに働いても、雪が深くなってしまうと、一日に50メートルの作業が進まないこともあるそうです。

車を降りて、雪の中を歩いてみました。ユニクロのヒートテックを上下きこんで、おまけにカイロまで持っていきましたが、冷え方が違う。体の芯が気づくと冷たくなっている。剪定作業の主力は50歳前半の女性たち。以前、レンコンの取材をしたときに、冷たい水に入って収穫していると、神経痛になってしまうといっていた話を思い出しました。

Photo_3北海道ワインには「雪摘み」とか「ラストハーベスト」とか「ウインターハーベスト」という名前のついたワインがあります。こんな状況で収穫していたんですね。
夏の光景から想像もつかない北国の厳しさでした。

●北海道ワイン
www.hokkaidowine.com/

●北海道ワイン鶴沼ワイナリー
http://www.hokkaidowine.com/contents/production/vineyard/index.html
今年の夏はここでワイン祭も開催。訪問客も年々増加。はやくここに醸造所ができるといいのに……(というのは私の個人的な希望です)。

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■Twitter もはじめました  http://twitter.com/miyukikatori
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2009年12月13日 (日)

富良野盆地で生まれるアイスワイン

Photo_2 ここのところわけあって、全国各地のワイナリーを精力的に取材しています。10月の終わりは島根、鳥取、そして北海道に。北海道は余市、栗沢、岩見沢、そして富良野と、500キロの道のりでした。東京に帰ってきたと思ったら、全国農業新聞の仕事で再び富良野に出かけることに。前回は千歳から道内に入りましたが、今回は旭川に飛んで、バスで富良野を目指しました。

Photo_3こちらは11月20日の写真。1カ月もたたないうちに、富良野はすっかり雪におおわれていました。画像のブドウは山ブドウとセイベルの交配種、「ふらの2号」というブドウ。富良野盆地の厳寒に耐えられるように交配育種されたブドウです。アイスワインを造るため、雪が降っても収穫をせず、ブドウの粒が凍るのを待っているのです。アイスワインとはドイツやカナダで造られる希少なワインですね。ブドウが凍ったらシャーベット状のまま、糖度が濃縮された果汁を絞って仕込みます。ドイツではわざわざ検査官が出向いて、凍っていることを確認して、はじめてアイスワインを名乗れます。

白いネットは鳥対策。霜が降りると葉が落ちてしまって、房がむき出しになってしまいます。これでは鳥の格好のえじき。そのためにネットをつけているのです。

Photoちなみにここ富良野でワイン造りを手掛けているのは、「北海道富良野市ぶどう果樹研究所」。富良野市が運営しているワイナリーです。ワイナリー名は「ふらのワイン工場」です。

最近の品質が向上は目覚ましく、ずっと気になっていたワイナリーでした。その理由をこの目で確かめたくて、訪問をしたいと思い続けていたのです。10月にやっと訪問が実現できたと思ったら、立て続けにふらのワイン工場を取材することになりました。

変革のキーパーソンは、高橋克幸さん。ちかいうちに記事にするつもりです。
 
Photo_6ちなみにアイスワインはこれ。『ふらのアイスワインFルージュ』。『ミュラー・トゥルガウ』『シャトーふらの』の赤、白もおすすめ。
ワイナリーは富良野市街をみおろす斜面。市街の中心部から数分のところです。







●ふらのワイン工場

http://www.furanowine.jp/furano/wainkozyo.html

2009年12月 13日 | | トラックバック (0)