日本のヌーヴォーを知っていますか? その6
こっくりと甘い香りにおとなしめの渋味
甘辛系の和食にぴったりの「ベリーA ヌーヴォー」
ベリーAの正式な名前はマスカット・ベリーA。日本ワインの父とも呼ばれる川上善兵衛氏が交配して、1940年に発表した品種です。現在、北は東北から、南は九州まで広く栽培されています。このブドウはアメリカ系品種の流れを継いでいるため、独特の甘い香りが特徴的です。そのためワイン通によっては、鼻もひっかけない人もいます。
甲州同様ベリーAも、生食用に出荷したブドウの残りをワインに利用するということが、これまで当り前に行われてきました。しかし最近では、はじめからワイン用に栽培されたブドウを原料にして、醸造に工夫を凝らしたベリーAヌーヴォーが出てきています。
山梨にある丸藤葡萄酒工業の大村春夫さんは、新酒に一番良い畑のブドウを使っているそうです。今年は造りも少し変えて、従来の新酒にはなかったふくよかさが感じられます。ワインはブドウの品質を上げてこそ、味わいがついてくるものだと痛感させられる仕上がりです。
九州は宮崎県都農町。ここではベリーAの収穫時期が山梨や山形に比べるとかなり早めです。都農ワイナリーのワインメーカー、小畑暁さんはベリーAの香りをもっと軽やかに、もっとチャーミングにしたいと思っていました。そこで今年は発酵前に果汁(正確にはマスト)をちょっと冷やして、果皮を果汁に漬け込むという手法に取り組みました。なるほど小畑さんのベリーAの香りは、心をくすぐる愛らしさです。
正直に言うとついこの間まで、私も「ベリーAなんて……」と思っていました。もっと正直に言うと、今でもいわゆる最高級ワインになる品種ではないと思っています。ただ、デイリーに飲める、味わいも価格もかわいいワインの存在も大切なのです。今回おすすめのベリーAは、炊き込みご飯や煮物など、和食とかなりいけます。お試しあれ。
■ベリーAヌーヴォー
ルバイヤート新酒 ベリーA 720ml(1200円)
品種:ベリーA/赤・辛口/ワイングローワー:大村春夫
10月17日発売 3400本
丸藤葡萄酒工業
TRIPPA隊の人気集中。とってもグラマラスなボディにびっくり! イチゴやベリー系の香りがふんだんにあり、渋味は極めて穏やかで、甘味も豊か。ふっくらとした優しさは飲み手の心をぐっと惹き付ける。今年はちょっと造りを変え、より柔らかい味わいに仕上げているという。コストパーフォーマンスの高さは保証できます! 丸藤は今年の春、フランスから帰国した安蔵正子さんが入社、チーム大村の栽培、醸造力がさらにパワーアップ。
都農ワイン マスカットベリー‐A 750ml(1330円)
品種:ベリーA/赤・辛口/ワインメーカー:小畑暁
10月16日発売 50000本
都農ワイナリー
輝くルビー色が美しい。フレッシュなイチゴやブルーベリーの香りが感じられる。渋味と酸が穏やかでフルーティーな仕上がり。今回試飲した6つのベリーAの中では、酸に丸さがある。後口ではわずかなタンニンがきゅっと全体を引き締め、心地よい甘酸っぱさが残る。みずみずしい若さ溢れるナチュラル・ビューティー。
ヴィンテージマスカットベリーA 750ml(1260円)
品種:マスカットベリーA/赤・辛口/ワインメーカー:三澤茂計
11月1日発売 25000本
グレイスワイナリー
毎年、その年なりの特徴を出しながら、安定感抜群のグレイスのヴィンテージシリーズ。2005年はフレッシュさ一杯のやや軽やかな仕上がり。干し芋のような香りはこっくりと甘く優しい。豊かな酸が特徴的だが、全体としてのバランスは良い。余韻にはほんのりとした甘味。溌剌とした若さがヌーヴォーらしい。
シャトー・メルシャン ヌーヴォー マスカットベリーA&メルロー 750ml(1575円)
品種:マスカットベリーA、メルロ/赤・辛口/ワインメーカー:味村興成
11月17日発売 4659本
メルシャン
国産品種ベリーAを主体に、ヨーロッパ系品種メルロをブレンド。色合いには、ほんのわずかにオレンジ色がさしている。ヌーヴォーでありながら、奥行きを感じさせる香りと味わい、そしてほど良い質量感。しなやかな渋味、飲み心地も良い。フレッシュな果実味や甘味の背後には、骨格の存在すらうかがえる。
(ボトリング前のサンプル試飲)
*各ワインはワイナリーから直接購入できます。
2005年 12月 8日 | 固定リンク
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