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2006年6月12日 (月)

#6-1 和歌山県 リストランテ アイーダ

■空豆たわわ、野菜畑に建つリストランテ

 紀北という、美しいひびきの土地に来た。
 和歌山県の北部にある岩出町の辺りでは、桃や豆がおいしいよ、とタクシーの運転手さんが教えてくれた。
 そう、またしてもタクシー。「バスはあるような、ないような」という場所にある、イタリア料理店に行こうとしている私である。
 運転手さんに、知ってるかな? と思いつつ「アイーダまで」と告げてみた。すると「ああ、“イタリア”のお店ね」とスッと走り出す。人気店なのかな?
 「“あの子”はがんばってはるね。週末は遠くからよくお客さんが来はるから」

 自家菜園の野菜で料理を作っていると聞いていたリストランテ「アイーダ」は、着いてみれば菜園どころか、かなり本格的な野菜畑の一角に建っていた。
 一面に広がる土の茶と葉の緑、スコーンと抜ける青空、土の匂い。
 じつは「アイーダ」オーナーシェフの小林寛司さんの実家は兼業農家。今でもお父さんがさまざまな野菜を育て、もちろんシェフ自身も「放りっぱなしだけど」と言いながら畑に立つ。
 ジャガイモ(インカのめざめ)、タマネギや大根、トマトはもちろん、ちりめんキャベツにカルチョーフィにアスパラ……。ちょうど私が訪れた5月頃はふっくらした空豆がたわわに実っていたし、もう少しすればズッキーニが食べ頃になる。

Photo_166 Photo_161今だったら空豆かな、と連れて行ってくれた畑の中の空豆エリア。無造作にブチッともぎ取って「どうぞ」と差し出された空豆は、生でかじると驚くべきみずみずしさ。やわらかく、豆の甘みがほんのり。


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穫ってもすぐにニョキニョキ生えるというアスパラ収穫は、このところ日課になっている。「(かわいいから)あえて曲がったものを出しちゃう」とシェフ。楽しそう。

  シェフと一緒にハーブ畑を歩いていたら、スッとしたり甘かったり、風にのっていろいろな香りが運ばれてきた。
 カモミール、タイム、バジリコ、ローズマリー、フィノッキオ、ディル……これは?
 「カレープラントですね」
 へぇ、と涼しげな色の葉に鼻を近づければ、おお、カレーだカレーだ。

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生まれたてといった風情の、まだプチなカルチョーフィ。これからどんどん大きくなってくる予定。


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モコモコという表現がぴったりくるほど元気に育っていたハーブたち。「種を植えただで、あとは勝手に育ってます(笑)」とシェフ。いつも皿の上で見ている(そして食べている)はずのハーブも、なんだかたくましく、これは何の葉などと言い当てられなかったりもする。


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「アイーダ」の畑から、ほんの一部を収穫。ローズマリー、ディル、タイム、カレープラント、カルチョーフィ、空豆、アスパラ、タマネギ。鮮烈な香りと土の匂いが混じり合う、生命力そのものの野菜達。

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畑の脇に生えていたヨモギは、天然酵母パンに練り込んだり。


 

そんな世界が、厨房のドアから5歩のところに広がっているのだ。
 彼は野菜やハーブを毎朝その日に使う分だけ収穫し、そこからメニューを組み立てる。足りなくなったら、ハサミやスコップを持ってひょいと引っこ抜きに出ればいい。ハーブはとくに、絶対に翌日には持ち越さない。つまりお客さんが「アイーダ」でいただくハーブは、摘んでから数分~数時間以内のものばかりというわけだ。
 
 「ハーブで苦労したくないんです」
 それが、小林シェフが地方を選んだいちばんの理由。
 「はじめは都会でやろうと思ったけど……でもハーブの値段に驚いてしまって。高くて何の香りもしないハーブを買って、ケチケチ使うなんて嫌だなぁと」
 そこで自宅の畑の一角に、店を建てた。わずか25歳でオーナーシェフになったから、「アイーダ」はもう8年目になる。

Photo_157    休日のまかないランチをご馳走に。「アイーダ」の畑で摘んだ野菜はバーニャ・カウダや、ラディッシュ&小タマネギのピクルスで登場。このお昼だけで野菜を何十品種いただいたことか! お肉はシェフ曰く「岩手短角牛モモ肉の“ヅケ”」で、塩漬け後、赤ワインとペッパーリーフで1週間漬け込んだ自家製加工肉など。ワインを注いでくれているのは、一緒に畑を回った大阪・玉造のビストロ「ル・ピリエ」の石田有巳シェフ。
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2006年 6月 12日 |

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