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2006年5月 8日 (月)

#4-1 青森県 オステリア エノテカ ダ・サスィーノ

■弘前で見つけた、パンクなイタリア料理

 偶然この店のメニューを目にしたのは、1、2年前だったろうか。
 「バッカラとケッパーのスフォルマティーノ」「ジャガイモのヴェルッタータ ホタルイカとボッタルガのリピエノ」「鳩の胸肉と詰め物をした腿肉 鳥の巣仕立て」
 これを弘前でやっている人がいる! ワクワクしたのと同時に、息切れしてしまわないかと余計な心配までしてしまったほどだ。
 2006年3月、ちょっと遅れて飛んで行った「オステリア エノテカ ダ・サスィーノ」。この間に笹森通彰(みちあき)シェフの料理は、息切れどころかさらにやんちゃに、そして地に足の着いた、弘前だからできるイタリア料理に進化(深化)していた。

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テーブルからシェフの姿が見えるオープンキッチン。笹森シェフのほかスタッフはコック1人、サービスのアルバイトが1人。



「僕は“東京並み”じゃなくて、“弘前でしかできない”料理をやりたい。東京からもお客さんが来てくれる店を作りたいんです」
 と話す笹森シェフ。だが、最初は試行錯誤だったという。
 たとえば今、メニューは4000円~の3コースとアラカルトだが、当初は1人6000円のコース1本。友人にも「高くて行けない」と言われ、しかもアラカルトもコースも選べないスタイルは地元になじみづらかったようだ。

 「結局、突っ張ってたんですよ」と笹森シェフ。ヨーロッパの輸入食材を多用してイタリアと同じ料理を作ろうとし、経費がかさんだ。その時期が冒頭のメニュー。がんばってはいたけれど、しかし彼はすぐにこう気が付いたのだそうだ。
 「ここ(青森)にはここのいいものがあると」
 そう思って見回してみれば、バルバリー種の鴨や国産フォアグラを作っている人がいる。鰺ヶ沢のイノシシ、青森シャモロック、ジャージー牛乳、それに果実や野菜(なんとトピナンブールまで!)。三方を海に囲まれ深い山が連なる青森には、恵まれた食材とチャレンジスピリットあふれる生産者たちがいるではないか。

Photo_67  笹森シェフは今、そんな地元の食材を使ってパスタやパンはもちろん、生ハムにサルシッチャ、さまざまなチーズ、アンチョビまで、作りに作りまくっている。
 「お客さんが少ない日、空いた時間にそういうのをちょこちょこ作って。家賃が安いからできることでしょうね」
 その様子はブログ(http://ssnikki.jugem.jp/)で紹介されているが、なんとも楽しげで、ときにシュールで、私は毎日ワクワクしてクリックしてしまうのだ。

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ワインセラーで熟成中の自家製加工肉。右上はあぐ~豚の生ハム(皮付きを作りたかったが、青森県の条例で皮付きが流通しないため沖縄の皮付きあぐ~豚を取り寄せた)、右下は地元の皮なし豚の生ハム。左は上からパンチェッタ、マグレ鴨(フォアグラを取った鴨)の胸肉の生ハム、豚肉のサラミ(唐辛子・スパイスミックス・プレーン)。

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鰺ヶ沢・竹浪さんのイノシシで作った生ハム。血を抜いた後ろ足を塩漬けにし、塩を取り替えながら約2週間。塩を落として軽く洗い、赤身肉を脂で覆い熟成開始。「これは脂の酸化の仕方がうまくいった」と笹森シェフ。

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鰺ヶ沢・竹浪さんのイノシシで生ハムなどを作っている笹森シェフ。この日購入したのはカシラ。翌日「丸ごと煮込んで冷やし固めてアンティパストに」(byブログ)なったそう。



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2006年 5月 8日 |

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