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2006年4月 1日 (土)

#1-1 山梨県 Casa Osano(カーザ・オサノ)

■自宅をリストランテに改装

 河口湖は、新宿から高速バスで1時間45分。
 富士急ハイランドの次で降りれば、いきなり手で掴めそうなくらいの富士山がそこにデンといた。
 日本一の山があって、湖があって、遊園地があるのだから観光地? と思いきや、冬の河口湖は人影もごくごくまばら。しかも目的のリストランテは観光客がいたとしてもフラリとはまず来ない、住宅地の一角に佇んでいた。

table_setting 居間を改装した小さなサーラ(フロア)には、3つのテーブルのほか、リストランテらしい華やかな花が飾られている。家庭の温かさがありながら、日常とは一線を画したリストランテの顔もきちんともっている空間だ。

 2005年9月2日にオープンしたばかりの「Casa Osano(カーザ・オサノ)」は、本当にCASA=家の一部を改装したリストランテ。その存在感はあまりにさりげなく、知っていても一瞬、本当にココだよね? と躊躇するくらいの普通さである(家の大きさ以外は)。
 シェフの故郷から来たシーサーが、ちょっと寒そうに鎮座している門をくぐってそろそろと玄関までたどり着けば、フォーマルな装いのマダムがにこやかに迎えてくれた。

 富士河口湖町は、マダムである奈緒美さんの実家。けれど小佐野彰シェフ自身もはじめから、東京に店を出すことはまったく考えていなかったとか。
「沖縄から上京したとき、時間の流れが違うなぁと。時間に追われているような気がして、独立するなら僕は故郷の沖縄でやるつもりでした」

 ご両親が沖縄で農家を営み、小さな頃から農作業を手伝ったという小佐野シェフには「自分の目で野菜が育つ様子を見たい」という思いがある。
「地方には地方のやり方があるんじゃないか、と思うんですよ。今はひとりで料理を作っているので野菜を育てるところまではできないけど、親戚の畑で野菜を育ててもらっているんですよ。種蒔きを手伝ったり、ちょくちょく畑に行って成長を見て、さわって、収穫したりするのがとにかく楽しいんです」

■野菜が育つ過程も楽しみたい

 今どき東京では、全国からどんな野菜でも新鮮な状態で届けられるだろうけど、そうじゃない。彼の場合は野菜をただ“使う”だけでなく、野菜の育つ過程を“楽しむ”ことがしたいのだ。
「たとえばこの辺りには鳴沢菜という高菜に似た野菜があって、地元の人は成長してから漬け物にして食べるんです。でも僕は、まだ小さいうちに摘んでパスタやサラダにできるんじゃないかって。そういうことも野菜の成長を見ているからできること。やってみたら、地元の人が“漬け物以外で食べるなんて”ってびっくりしてました(笑)」

 ゆくゆくは地産地消が理想。でも、何が何でも土地の食材だけでと決めたわけでもない。沖縄の食材ももちろん採り入れるし、たとえばこの日の豚肉は岩手産、魚は千葉産だ。
「初めての土地に来たばかりなので、食材に関する知識はまだまだこれから。そんな状態で土地のものにこだわりすぎて、幅を狭める必要はないと思うんです。今は自分の料理に合う食材を探しながら、できるだけ地元のものを使っていけたらいいんじゃないかと」
 新しく知った土地や故郷の食材が加わって、彼の料理がこれからどう幅を広げていくのだろうか。(続く)

* * * * * 「Casa Osano」のディナーコース 前編 * * * * *
ランチに、夜のコースをいただいた(予約すれば可能)。コースは日替わりで、おすすめ1コースのみ5,250円。リストランテであるからフォカッチャやグリッシーニはもちろん自家製、さらに手打ちパスタが二皿、食事の締めくくりにはスープも。

osano1 パン:栗のスキアッチャータとグリッシーニ
ミラノの店で作っていたスキアッチャータ。小佐野シェフは栗の粉を使い、胡麻と岩塩を効かせている。グリッシーニにはポレンタ粉とパルミジャーノを使用。富士山の溶岩プレートにのってスタイリッシュに現れる。






osano2
突き出し:紋甲イカのサラダ仕立て

スキレットで軽く焼いた紋甲イカの甘味と弾力のある食感に、ジャガイモのチャルデ(こんがり焼いたもの)のカリカリッとした歯触りが楽しいストゥツキーノ。



osano3 前菜:黒ガレイと飛び魚のカルパッチョ
函館の黒ガレイはボッタルガ、館山の飛び魚は黒米のフリットがアクセントに。マスタードや山クラゲ、マーシュなどの有機野菜は山梨・上野原の長田さんのもの。



osano4 プリモ1:キターラ風タリオリーニ 魚介の煮込み
キターラの形状でありながら、魚介のエキスを吸ってちょうどいい固さになるようタリオリーニの細さに仕上げたパスタには、シェフの故郷である沖縄産のタンカンの皮を練り込んだ。口に入れた瞬間はわかるかわからないか程度の香りが、噛むうちに柑橘が感じられ、イイダコやアサリ、ホタテ、アイナメなどのだしがしっかりと出た魚介ソース全体を引き締める。固さも計算通り、絶妙な加減。

2006年 4月 1日 |

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