2009年6月11日 (木)

【番外】ロエロ・アルネイスが一気に飲める試飲会、参加しませんか?

イタリア・ピエモンテ州の白ワイン「アルネイス」を知っていますか?
ピエモンテと言えば、バローロやバルバレスコなどの赤ワインで知られますが、実は白ワインにも個性派が揃っています。
その中で、私が偏愛するのはアルネイス。
アルネイス種100%の白ワインで、さらにピエモンテ州のロエロ地区で生産される「ロエロ・アルネイス」はDOCG。奥ゆかしく、白い小花のように可憐な味わいには、なんとも心癒されます。

しかしこの「ロエロ・アルネイス」、現地ではバルバレスコほどの生産量ながら、日本で発見することが少ないとうのが悩ましいところ。
そこで今、日本にある「ロエロ・アルネイス」を可能な限り、一度に飲んでみたい……という長年の夢が、広尾のリストランティーノ「バルカ」のソムリエ工藤さんと田窪シェフの心意気で、叶うことになりました!

というわけで、みなさんも「ロエロ・アルネイスを一度に飲もう!会」に参加してみませんか? 輸入元の垣根を超えて、ひとつの品種だけを造り手別に飲み比べる機会って、そういえばあまりないですよね? しかも入荷数の少ないレアものも登場します。
アルネイスのおいしさと、造り手による味わいの違いに早く驚きたい! というみなさん、どうぞふるってご参加ください。

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日時:7月11日(土) 12:00~15:00
会場:リストランティーノ「バルカ」

http://www.ristorantinobarca.com/
東京都渋谷区恵比寿2-22-10 広尾リバーサイドG B1F
Tel&Fax 03-5449-4798
会費:6000円(当日、現金にてお支払いいただきます)
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参加希望者は、電話またはFAXにて
●氏名
●電話番号
●同伴者氏名

を、6月27日(土)までに、「バルカ」Tel&Fax 03-5449-4798までご連絡ください。
※定員になり次第締め切らせていただきます。
※キャンセルや人数変更の場合はお早めにお知らせください。

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2007年9月 4日 (火)

#10-2 大阪府 エル・バウ・デコラシオン

■コラボ・メニューはこうしてできた!
el Bau Decoration con Villa AiDA ~Menu del Terzo Aniversario~
コース¥10,500 ※ワインは別料金

entre●ガスパチョとカネロニ 
vino●ヴィヴァルディ・ブリュット(アルト・アディジェ)

Photo_4 担当:〈ガスパチョ〉小林
今回、コースの流れは「夏から秋へ」というイメージにしようと、まず突き出しのガスパチョが決まった。ちなみにクライマックスのセコンドは秋を先取りする小鳩。
ガスパチョはシェリービネガーの酸味を強めに利かせ、イカゲソの肝和えで隠し味程度にコクを出し、イカの鉄板焼きで香ばしさを感じさせる複雑な味わい。
担当:〈鴨のカネロニ〉下江
冷製であるガスパチョを受けて、「では温かい前菜を」と、一皿の温度差という視点から考えたのが鴨のカネロニ。
青森産マグレ鴨のモモ肉をスーゴ・ディ・カルネでじっくり低温で煮込み、アニス、クローブ、シナモン、ほんの少しの黒オリーブを加えたものをパータブリックで巻き、焼き上げた。

antipasto●オマール海老とそのラヴィオリひよこ豆の焼ニョッキ 
vino●コエノビウム'05(ラツィオ)
Photo_5
担当:下江
焼ニョッキというアイテムは決まっていたが、試作段階ではスープ仕立て。それをリムが広くボウル部分の小さな器に入れ、北海道産のボタン海老を叩いて煎餅状にし、凍らせたもので“ふた”をする設計だった。
この案を小林さんに投げかけると、「お祝いだし、オマール海老にしてみては?」という意見が返って、練り直したのがこの皿。
テールの火入れも微調整を重ね、レアめのローストに決定。その上に、タオルケットのようにふんわり掛けたラルドがローストの熱でしっとりと溶けかかる。
爪の肉はラビオリの詰め物に。餃子の皮のごとく、一枚ずつ麺棒でごくごく薄ーく延ばしたラビオリ生地で包み、蒸籠で蒸し上げた。
それらをオマールの頭でサッとだしを取った、旨味はあるがさらりとしたスープとサフランの香りでまとめている。


primo piatto●群馬産 上州和牛のテールのラグー
             黒ビールを練り込んだウンブリケッリ 
vino●グラミネ ピノ・グリージョ'04(トレンティーノ)
Photo_3
担当:下江
普段の彼なら、こういったガツン系ラグーは滅多にやらないから驚いた。ラグーに決まったのは、フェアに当たってのコース内容と厨房の機能というハード面の理由から。
ラグーは和牛テールに焼き色をつけ、赤ワインに漬け込んでからトマトの水煮やミルポワと煮込んだ、下江さん曰く「普通のラグー」。と言いながら、やはり彼らしいさらりと軽い仕上げ方になっているから不思議である。

特筆すべきは、黒ビールを練り込んだウンブリケッリだ。
「ふと、思いついたんです。最初はハーブを練り込んだキタッラを考えたんですが、今ひとつ面白くないかなと。それでこのアイディアを出したら、小林さんのスイッチもカチッと入って(笑)」(下江)
「初めてですよ、黒ビールを練り込むなんて。でも牛テールのビール煮込みは料理としてあるので、それを分解したイメージなのかな、と面白くて」(小林)
パスタ生地の材料は、下江さん曰く「ちょっと贅沢なエビスの」黒ビールを煮詰めたものと、強力粉、薄力粉のみ。卵を使わない伝統的な製法で、そして麺を1本1本こよって延ばし、来客者全員の分を仕上げている。ふわりとしたモチモチの食感、噛むごとに感じるほろ苦さとラグーが口の中でつながり、一皿が完成される。



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *


un goccio del vino bianco●Altis Sauvignon '04
                 / pierpaolo pecorari(Friuli)

さて、ここで前半終了。後半の魚介料理に向けて、フリウリのソーヴィニオンで口をすっきりとさせる。


secondo piatti(pesce)●福岡産イトヨリ オクラ ピオーネ コルツェッティ
Photo_6 担当:小林
ソテーした魚に、野菜をくたくたに煮たソースの組み合わせは、小林さんの得意とするところ。これに魚のだし、コルツェッティ&ジェノヴェーゼというリグーリアなコンビで直球かと思いきや、隠し球も潜んでいた。煮詰めたシェリービネガーに漬け込んだ、岡山産のブドウ「ピオーネ」だ。
「うちの畑のオクラと、魚を焼くのと、コルツェッティという構成は自分の中で決まっていました。でも魚の種類を何にするか、最後まで悩んで……」(小林)
結局イトヨリに決めたが、特有のぬるりとした舌触りと、サクッとしながら噛めばとろとろのオクラ、このぬるぬるコンビに、ピオーネ+シェリービネガーの熟成した酸味が心地いい。
ピオーネの発想は、下江さん。
「でも僕の段階ではフレッシュのピオーネをのせ、モスカートビネガーを煮詰めたソースを添えるという組み立てでした」(下江)
そこから、いっそピオーネをモスカートビネガーに漬けてみてはどうだろう、と小林さんが提案し、この構成に着地。


secondo piatti(carne)●フォアグラを包んだ仔鳩 茄子 黒トリュフの香り 
vino●ラ・マレーナ'02(トスカーナ)

Photo_7 担当:小林
やわらかな赤身の仔鳩に、濃厚なフォアグラ。実は、最後にこのボリュームの肉料理を出すこと自体、「軽く、おなかが膨れすぎないコースが理想」という下江さんにとっては冒険だったとか。小林さんは「その繊細で優しい、彼の世界観を壊してみたくて(笑)」とニヤリ。
まず最初に素材、仔鳩と水茄子が決まった。水茄子は「この夏、うちの畑で水茄子が毎日すごい穫れて」(小林)、そのコンフィチュールが美味しかったから。
今回のバージョンでは水茄子をカラメリゼし、レモンの角切りと白ワインですっきりと煮詰めた。ちょうどこれがモスタルダのイメージになる。
「驚いたのは、小林さんが“ソースのない肉料理、作りましょか”と言って、内臓をコンカッセ(サイコロ状カット)にし、ソース代わりとしたこと。僕にはない発想だったので」(下江)
「そこにミョウガのピクルスで酸味を添えたのは、下江さんの提案です」(小林)



dolce●バジリコのズッパと川西いちじく ゴルゴンゾーラのジェラート 
vino dolce●グレ・サン・ポール セヴィヤーヌ'05(フランス)

Photo_8 担当:下江
以前から下江さんの「バジリコのズッパ」が気になっていたという小林さんの言葉で、まずズッパが決まり。そのしっかりとした酸に合わせ、きっちり甘いゴルゴンゾーラとホワイトチョコのジェラートを合わせた。
「温度差のあるドルチェを作りたかったので、この“冷”に対し、温かいパーツとしていちじくのローストをもってきました」(下江)
コンポートでなく、甘み穏やかで独特の鉄分を感じさせるいちじくのローストが、酸味と甘味の仲を取り持つ役割をする。

piccola pasticceria●カカオのビスコットと生チョコレート、
                赤ピーマンのパートフリュイ

Photo_9 担当:下江・小林
このワクワクするコースの最後、お茶菓子で登場したのは、儚いほど薄いカカオとオレンジのビスコットで挟んだ生チョコレートと、鮮やかな赤ピーマンのパートフリュイ。
「どっちがどっちの担当か、すぐわかりますよね」と、アイーダマダムの有巳さんがクスッと笑った。ホント、お皿の上に、まるで2人がちょこんと並んで出てきたように思える。みなさんはどっちがどっちか、わかりますか?


おみやげ●お花もコラボ

Photo_10 「エル・バウ・デコラシオン」はお花屋でもあるゆえ、最後に、ゲスト全員に手渡してくれたブーケ。実はなんと、これまでコラボ! お花と楽しげに戯れる、茄子や大きなオクラが見えますか?





エル・バウ×アイーダ●シェフ&マダムたち
Photo_12 左から、「ヴィラ・アイーダ」の小林寛司シェフ、マダムの小林有巳さん、「エル・バウ・デコラシオン」のマダムでフローリストの下江恵子さん、シェフの下江潤一さん。
「今回のイベントは、実は4人のコラボです」と下江さん。
料理はシェフ二人が担当し、それに合うワインはすべて小林有巳さん、そして店内のお花やおみやげのブーケは下江恵子さんが担当。
テーマに掲げた「感・美・気・魂」は、4人それぞれの好きな漢字を挙げたもの。感→小林シェフ、美→恵子さん、気→下江シェフ、魂→有巳さんと、キャラが忍ばれるセレクトだ。



DATA

■el Bau Decoration
大阪府豊中市岡町南1-1-22 YABE B.L.D1F
Phone 06-6857-2772
リストランテ11:30~14:00LO、18:00~21:00LO
フラワーショップ10:30~
火曜・第2月曜休
阪急宝塚線岡町駅駅より徒歩1分

■Villa AiDA
和歌山県岩出市川尻71-5
Phone 0736-63-2227
リストランテ11:30~14:00LO、18:00~21:00LO 
アリメンターリ11:00~17:00
月曜休(祝日の場合は火曜)
JR岩出駅よりクルマで約10分
URL:
http://www.ristorante-aida.com/

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2007年9月 2日 (日)

#10-1 大阪府 エル・バウ・デコラシオン

■2日限りのコラボ「el Bau Decoration con Villa AiDA」

 大阪の郊外に、花屋&リストランテという斬新なスタイルで登場した「エル・バウ・デコラシオン」が、この夏でオープン3周年を迎えた。
 それを祝って、同店の下江潤一シェフと、同い年で普段から交流のある和歌山のリストランテ「ヴィラ・アイーダ」の小林寛司シェフがコラボする! というイベントが8月26・27日に開催。行ってきましたよ、世界陸上に沸き立つ大阪へ。

 言い出しっぺは、「ヴィラ・アイーダ」の小林さん。
「お互い郊外でがんばっていて、同じ歳で、彼の料理に惹かれるものがあったから」と、ある日突然「エル・バウ・デコラシオン」に一枚の“企画書”を送ったのだとか。
 一方の下江さんは、「彼がうちの3周年を知っていたこと自体がびっくり(笑)。でも言ってもらえなかったら、きっと僕らは自分たちでは何もしていなかった」と背中を押された気がしたのだそうだ。

 かくして春先から打ち合わせや試作を重ね、一緒にコースを作り上げていく。お互い対等に意見をキャッチボールしながらメニューを試行錯誤する作業は、オーナーシェフである彼らにとって普段にはない刺激的なできごとだったらしい。

 二人の目標は、「コラボと言いながら、単にお互いのスペシャリテを代わりばんこに出すのではなく、ちゃんとコラボしよう。二人で一つのコースを成立させよう」ということ。
 その作業のプロセスは後に回すとして、完成したコースは「エル・バウ・デコラシオン」の料理でも「ヴィラ・アイーダ」のそれでもない、まったく新しい店の料理のようだった。

 そもそも、食材の味覚や食感、色彩を繊細に組み立てるタイプの下江さんと、素材のもつ力をフルに引き出すのが得意な小林シェフとでは、目指す料理も世界観も全然違う。でも、それらがいい具合に化学反応を起こして、もう一つの面白い個性を生んだのだ。

「小林さん夫妻には、手を差しのべてもらって、引っ張ってもらった感じ。3周年の切り替えとして、リフレッシュできました。またこれからやなって、一からスタートできそう」(下江)
「得るものが大きかったですね。自分も成長できたし、またこれからもこんな機会を持ちたい」(小林)
 二人のシェフが一つのコースを創り上げていく“コラボ”とは、お祭りであり、実験であり、冒険であるのかもしれない。彼らの個性をキャッチボールするプロセスが、なかなかに面白い。<続く>

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2007年5月30日 (水)

#9-5 鹿児島県 CAINOYA

■ワールドクラスのカプチーノを、霧島で飲む

 日本バリスタ選手権といえば、バールなどで働くバリスタが、エスプレッソやカプチーノの技術を競う日本で唯一の競技会。優勝者は日本代表となって、世界の舞台に立つ資格を得る。その昨年のチャンピオンが、鹿児島空港から30分ほど走った霧島市にいる。

 「ヴォアラ珈琲 国分本店」の竹元俊一さんは、競技会でも使われているマルゾッコ社の、さらに特別仕様のマシンMISTRALを操り、見事なカプチーノを淹れてくれる。……これが、無料なのだ。
Photo_341   というのもここはバールでなく、焙煎工房。珈琲豆を買った人には、彼の淹れたエスプレッソやカプチーノが味わえるのだからなんとも贅沢! このカプチーノ、苦みと酸味が抑えられ、マイルドというか、綺麗な印象。イタリアのアラビカ種やロブスタ種とは違った独特の味わいが、何とも言えず美味しい。聞けば、豆はブラジルなんだとか。

元パティシエだったという竹元俊一さん。「当時はバリスタの教室や学校等が無く、手探りで試行錯誤しながら学んでいくしかありませんでした」

Photo_344   工房を見せてもらうと、グリーンの生豆がまず、美しい。
 「豆の選び方がまったく違うんです。よく、珈琲屋がコーヒー豆のピッキング(質の悪い豆を取り除く作業)をしているでしょ?うちの豆には、その必要がない」と語るのは、焙煎職人の井ノ上達也さん。「ヴォアラ」では、『カップオブエクセレンス』で上位に選ばれた生産者と取引しているからだという。

焙煎職人の井ノ上達也さんは、職人歴25年。『カップオブエクセレンス』の国際審査員でもある。

Photo_345 『カップオブエクセレンス』で上位の生産者から、豆を落札。井ノ上さんはなんと、生豆を霧島の水で洗い、遠心分離で脱水する。理由は「長旅で疲れているだろうから」。

 『カップオブエクセレンス』とは年に一度、コーヒー生産国6カ国で開催される、いわばコーヒー豆のワールドカップ。厳しい審査を経て選ばれたコーヒーは、スペシャルティーコーヒー(生産地域(風土)・農園(生産者)・標高・品種・収穫時期・収穫方法・処理方法・などの品質チェックをカップテストで一定の基準を満たした素材)と呼ばれ、最終的には国際審査委員によって「最高の中の最高のコーヒー」が決定する。

 井ノ上さんはそれを、「ヴォアラ」仕様のマシンと霧島の水と、実験を重ねた独自の焙煎方法で焙煎している。
 私が今飲んだのは、実はワールドクラスのカプチーノだったのだ。
 

Photo_346 12~13種のコーヒー豆を販売。豆は焙煎後8時間以上経ってからが飲み頃。エスプレッソは4~5日以上、2週間後ぐらいががピークで30日以内に使い終わる。



Photo_347 焙煎は200℃前後で行うが、マニュアルのマシンで微妙な火加減を調整する。同じ種類でも豆により適切な火加減が変わってくるため、カッピングで修正する。
Photo_348


エスプレッソを抽出するまえに、豆をタンパーに入れてギュッと均等に抑える。エスプレッソは、ここの加減が命。


Photo_349 Photo_350Photo_351Photo_352

 

完成!







DATA

ヴォアラ珈琲 国分本店
鹿児島県霧島市国分中央5-3-17
10:00~19:00 火曜休
Phone 0120-86-4151 
Fax 0120-4151-89

URL:http://www.inouecoffee.com/

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2007年5月28日 (月)

#9-4 鹿児島県 CAINOYA

■子どもに安心して食べさせられる、美味しい黒豚を

 「CAINOYA」で使っている黒豚は、地元鹿児島の「三清屋」のものである。
 塩澤シェフから「フリーの黒豚生産者です」と聞いて、畜産家で“フリー”って???と不思議だったけれど、つまり○○協会とか団体に属さず、飼育からと畜、解体まですべて自社だけで行っているらしい。

 「三清屋」の生産者、田中武雄社長は大手製鉄所から脱サラして、自然食品を扱う事業をしていた。そこで現代の畜産に目を向け、成長ホルモンや抗生物質を配合した飼料を与えるなど、食べ物としての健全さや品質より生産性を重視した在り方に疑問をもち、「子どもに食べさせられる、おいしい黒豚を」といきなり素人から養豚業を始めてしまった。
 当時45歳。奥さんの陽子さんは、文字通り腰を抜かして1週間寝込んでしまったという。

Photo_316Photo_315  育てているのは、純粋六白黒豚。あたり一面緑に囲まれ、空気もおいしい。そんな場所で、「三清屋」の薩摩黒豚は、天然地下水を飲みたいときに飲みたいだけ飲め、天気のいい日には放牧される。山の起伏を利用した放牧地には森林があり、小川があり。黒豚たちはそこを走り回り(けっこう速い!)、どんぐりや赤土も食べる。まったく、ストレスフリーである。

  「三清屋」の豚舎の周辺は、まったく家畜臭さがないのに驚く。
 「健康的な餌を食べ、自然にのっとった育て方をして、糞尿を分解し、自然発酵させると臭くはなりません」と陽子さん。狭い豚舎で運動もできず、コンクリート床に消毒薬を撒かれ、成長ホルモン剤や抗生物質の入った餌を食べていたのでは病気になったりする。そして注射を打たれる……という生態では、豚の健康からも、人間の健康からも遠ざかってしまうだろう。

Photo_319バンガロー方式の豚舎は、一頭当たりの面積が広く、黒豚は自由自在に歩き回る。
床は、通常コンクリートだが、ここでは水はけの良い鹿児島のシラス土壌を生かし、バイオTY菌という好気性バクテリアを増やす菌を撒く。そのため自然発酵分解されて、糞尿から発生する臭いがしない。消毒剤も撒かない。

 「三清屋」では、もちろんワクチンなどを一切使わない。飼料にも成長ホルモン剤や抗生物質などを一切使用せず、大豆・トウモロコシ・麦・葉緑素・魚粉等を取り寄せて自家配合し、自家栽培の無農薬有機のサツマイモを与えている。さすが鹿児島の黒豚。サツマイモは、黒豚の甘みを増す働きがあるそうだ。それを食べた黒豚の糞は堆肥にして畑に使う、循環型のやり方である。

Photo_320  通常の白豚は6カ月で出荷されるが、三清屋の薩摩黒豚は成長まで1年近くかかる。「環境が人を育てるというように、自然の中で健康的に育った薩摩黒豚は格別」と陽子さん。肉は独特のナッティな風味、脂はさらりとして胃もたれしない。ストレスのない元気な豚の肉は、つまりは人間のカラダにも美味しい。

Photo_323  ←ここの黒豚は、とても人なつっこい。知らない人間が来ると、最初はこんな風に奥まで逃げて隅っこにかたまりつつ……

Photo_324


でも興味津々でこちらをじーっと見ている。面白いくらいピタリと止まって動かない→

Photo_325

←と思いきや、一頭が動くといきなりダダダッと駆け寄ってくる!けっこう足は速い。

Photo_326

眉間にしわを寄せた、困ったちゃんの表情の豚も。黒豚はよく運動しているため意外なほどスリム。10~11ヵ月で120kgほどになる。→


DATA
有限会社 三清屋
鹿児島県鹿屋市笠之原町2653
Phone 0994-44-5196  
フリーダイヤル 0120-41-3408
URL:
www.minc.ne.jp/~sansinya/



*次回は5月30日(水)に更新します。

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2007年5月14日 (月)

#9-3 鹿児島県 CAINOYA

■自然放牧の黒豚で作る、トスカーナのラグー

 「CAINOYA」のベースは、トスカーナ料理である。
 トスカーナといえばキアーナ牛やチンタセネーゼの産地。なんと、肉文化の土壌がある鹿児島とぴったりじゃないか。
 ただし鹿児島産黒毛和牛は霜降り肉のため、赤身を求める塩澤シェフは県外の牛肉を使う。が、豚は鹿児島のチンタセネーゼならぬ、「三清屋」の薩摩黒豚だ。抗生物質や成長ホルモン剤など一切無添加の健康的な餌を食べ、天然水を飲み、元気に放牧される健康な豚。この豚があるからこそ、脂の旨みが深く、しかしもたれないピーチのラグーも可能になる。
 
 野菜は自家菜園のものを中心に、足りないものを買い足す程度。
 訪れた3月には、ルーコラ・セルバーティカやカステルフランコ、エンダイブ、水菜、トレビス、フィノッキオなどが盛りだった。春には花ズッキーニ、夏には茄子も美味しいとか。

「料理人としては、まだ試行錯誤の段階です」という塩澤シェフは、発展途上だからこそ変化を恐れない。たとえば最初はこてこてのトスカーナ料理にこだわり、ワインもトスカーナのものだけにしていたけれど、だんだん「イタリアそのままなんて無理」と思い始めた。ここは鹿児島なのだから、鹿児島の食材で、それに合った調理法こそおいしいのではないか。

 調理法にしても、試行錯誤だ。肉を切るにしてもどういう角度で包丁を入れるとおいしいかを常に試している。火入れにしても炭火だけで行っていたものを、最初にスチームコンベクションで火を通し、仕上げに炭火で香りをつけたり、シリコンペーパーで包んでスチームを当てたり。新しく得た情報や知識を、素直に、フットワーク軽く即実行。
 また夏にはWEB上でイタリアワインや食材も販売予定。ドルチェと惣菜、手打ちパスタとソースのセットも販売する予定。

--シェフPROFILE--
Photo_313 塩澤隆由 takayoshi shiozawa
1972年生まれ。鹿児島県出身。高校卒業後、家業の喫茶レストランを手伝い、その後コーヒー専門店、カフェレストランなどで調理・サービスなどを経験。交通事故に遭い、一旦は飲食業を断念したが、1999年より父の和食店「かいの家」の営業時間外に、ランチと深夜のみ「イタリアっぽい料理を出す」店を始める。2002年にイタリア・トスカーナ州トレクァンダ村で2週間ホームステイをしながら伝統料理を学び、それを機に本格的にイタリア料理に取り組み始める。再び半年後に2週間、以後毎年イタリアへ。トスカーナと各地方のワイナリーを廻りながら各土地の伝統料理を食べ歩く。2005年11月末、リストランテ「CAINOYA」オープン。

DATA
Ristorante CAINOYA
鹿児島市城山町2-11 照国宮前通り ドルチェヴィータB1F
Phone 099-223-5277
12:00~13:30LO(水曜~日曜のみ)、18:00~22:00LO 
月曜休
ランチコース1575円~、2625円~、5250円~ 
ディナーコース3750円、5250円、7350円、10000円、12600円 
20席(うちカウンター4席) 禁煙
JR鹿児島駅または鹿児島中央駅よりクルマで約15分
URL:
http://www.cainoya.com/

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2007年5月12日 (土)

#9-2 鹿児島県 CAINOYA

■イタリアのように、バックグラウンドのある料理を

 「CAINOYA」の塩澤シェフの名刺には、「三代目」と書かれていた。
 初代は戦後、山梨から鹿児島へ移り住み、「甲斐之家食堂」という洋食や寿司、天麩羅など何でもありの店を開いたそうだ。甲斐の国から来たから、カイノヤ。しかし初代が亡くなり閉店。二代目はレストランを経て、和食店として繁華街に「かいの家」を再開した。

 しかし塩澤シェフは学生時代、父がお客に頭を下げている姿が嫌で、店を継ぐつもりはなかったという。
「高校を卒業しても、やりたいこともわからなくてフラフラしてました。父の店を手伝ったり、いや、あんまり手伝わなかったかな。そのうちコーヒー専門店でアルバイトを始めて、そこで社会の厳しさを初めて知って」
 掃除から調理、サービスと何でもやって、やがて社員になり、店長になる。その後彼が師と仰ぐ人が独立したのを機についていき、仕事を覚え、やっとこれからというときに交通事故に遭ってしまう。かなりの大けがだったらしい。
「今でも握力が弱いんですけど、ああこれで飲食業はもう無理だなと思いました。でも、何やろうかと考えたら、やっぱりこれしかできないと」

 そんな時手にしたのが、落合務シェフの料理本『イタリア料理 100のおいしいキーワード』(講談社)だ。
 当時は、恐れ多くも「これならできそう」と思ってしまった。そこで、和食店「かいの家」を、ランチと深夜だけ借りて、本人曰く「イタリアっぽい料理」を出し、そこからだんだんイタリアの世界にはまっていく。

 まず、ワインはフランスでなくイタリアが素直に好きだと思えた。それもネッビオーロ種でなくサンジョベーゼ種だった。となると、今度は好きなワインの産地、トスカーナの地を踏みたくなる。
 そこでトスカーナ州のモンテプルチアーノとモンタルチーノの中間ぐらいにあるトレ・クァンダ村で2週間、一般家庭にホームステイ。地元のリストランテやアグリツーリズモで伝統料理を学んだり、ポルケッタの工場や肉屋を見学する。面白い。塩澤シェフはたった半年後、再び同じ場所に立っていた。
 彼を掻き立てたのは「これでいいのか」という疑問だ。

 当時、彼が作っていた料理にはバックグラウンドが何もない。正直、真似だった。
 イタリアは、土地が違えば料理も違う。それぞれに背景があり、伝統がある。で、イタリア人は皆自分の土地の食材に誇りを持っている。それを知ってしまったら、自分の中途半端が嫌になったという。

「イタリアに行くまでは、全国の食材を取り寄せてばかりいたんですよ。でもそれも違うと思えてきて。全部ではないけれど、でもやっぱり僕も鹿児島の食材に誇りをもってやりたいと」
 以来、毎年欠かさずイタリアへ飛んでは、トスカーナに1週間、ほかの地方を1週間で回り、食べ歩きやワイナリー巡りを重ねてきた。エンジンがかかるのはちょっと遅かったけれど、いや、遅かった分、すごい勢いでイタリア熱が進行しているようにも思える。



***「カイノヤ」のディナー***

ディナーコースは、5コースに細かく分かれている。今回、3月の訪問では7350円のコースをいただいたが、4月に、内容が多少変更になった。変更後は以下の通り。

3750円…前菜・プリモ・セコンド各1、ドルチェ、カフェ/5250円…前菜1(おまかせ)・プリモ2・セコンド1(ともにプリフィクス)、ドルチェ、カフェ(小菓子)/7350円…前菜2・魚料理1(ともにおまかせ)・プリモ2・肉料理1(ともにプリフィクス)、ドルチェ、カフェ(小菓子)/10000円と12600円はすべておまかせ

Photo_303 ●自家製パン
毎日、ランチ前とディナー前に焼き上がるよう作っている自家製パン。今日はホウレンソウ、グリッシーニ、ローズマリーのフォカッチャ、トスカーナパン。パンに添えるオリーブオイルは、もちろんトスカーナ産。


Photo_304 ●茨城産仔牛のトリッパと自家製ルーコラ
シャキシャキとした歯ごたえのトリッパ。優しい味わいながらブロードがしっかりと利いていた。





Photo_305 ●2色のアスパラとアニメッラのソテー
  温度卵と松の実のソースで

グリーンは自家畑より、ホワイトはフランス産。どちらもスチームコンベクションオーブンで蒸し焼きにし、旨みを凝縮。ホワイトアスパラに巻いたラルド、パートフィロがカリカリ、パリパリと香ばしく、温度卵のソースとさすがの相性。リー・ド・ヴォーも散りばめてありました。

Photo_306 ●ホウレンソウとフォルマッジのラヴィオリ
  自家製パンチェッタと新玉葱
  フルーツトマトのアマトリチャーナ

ラヴィオリのチーズは、リコッタ、パルミジャーノ、マスカルポーネの3種混合で、おだやかな味わい。逆にアマトリチャーナは酸味も甘みも強く、煮込んだというよりフレッシュな印象。聞けば仕上げ直前にフルーツトマトを入れているとか。それにしても新玉葱の甘みは格別。

Photo_307 ●ピーチ 三清屋さんの自然飼育黒豚のラグー
三清屋は鹿児島の黒豚生産者(後にご紹介します)。その豚肉のホホ、モモ、肩ロース、スネ肉を、半分ミンチ、半分は包丁でブツ切りにして合わせ、ラグーに。健康的な餌と環境で育った黒豚の旨みが、この一皿にギュッと凝縮されている。パスタの小麦粉は、イタリア・ピエモンテのムリーノ・マリーノ社製。昔ながらの石臼で挽き、地元でもファンの多いメーカー。


Photo_308 ●自家栽培野菜
シェフとお父さんが育てている自家野菜の盛り合わせ。3月時点で、カステルフランコ、エンダイブ、水菜、トレビス、ルーコラ、フィノッキオ。




Photo_309 ●岩手産 短角和牛サーロインのビステッカ
牛肉は最初に炭火で焼き、スチームコンベクション・オーブン、最後に再び炭火で仕上げる3段階の火入れ法。表面に炭の香りをまといながら、中はしっとりと火が通る。






Photo_310 ●CAINOYA風ティラミス2007
ふんわり、しっとり、アマレットの香りのティラミスに、喜界島の黒糖で作ったカラメル、サクサクのメリンガを散らして。



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頼んだ赤ワインは、シェフの思い入れのある1本。「ロッソ・ディ・モンタルチーノ 2001 テヌータ・ヴィタンツァ」8800円。5年来のつき合いで、2006年6月に来店し、ワイン会も行った。今年、ここの新カンティーナ完成記念イベントに、シェフとして料理を作りに呼ばれているとか。


007_6  時間の都合で畑を見ることはできなかったけど、シェフから送られてきた自家畑の写真がこちら。カルチョーフィ、レッドオーク、カモミッラ、エンダイブ。自家畑の野菜はすべて無農薬。


このほか、ルーコラ セルヴァティカ・ビーツ・チリメンキャベツ・イタリアンパセリ・カステルフランコ・カーボロネロ・ブロッコリー・アスパラ・サラダほうれん草・コールラビ・フィノッキオ・水菜・新玉ねぎ・菜の花・ラディッシュ・蕪・そらまめ・えんどう豆・ミニ人参・茄子・サンマルツァーノ・トマト・ズッキーニなどなどを育てている。
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2007年5月 12日 | | トラックバック (0)

2007年5月10日 (木)

#9-1 鹿児島県CAINOYA

■本州を飛び立ち、九州最南端の鹿児島へ

 鹿児島といえば、真っ先に思い浮かんだのは「黒」だった。
 黒毛和牛、黒豚、ついでに佐藤の黒(芋焼酎です)。黒いものは体によくて美味しいという、これまた漠然としたイメージがある。豚も牛も黒というその土地は、どんなところなんだろう?

 「鹿児島に『CAINOYA』というリストランテがありますよ」という情報をメールでいただき(情報大募集です)、その高揚感溢れる文面から、居ても立ってもいられなくなってしまった。その情報主はイタリア関係のお仕事で、自身も鹿児島のご出身。でも、「まさか、こんなに頑張っているイタリアンが誕生しているとは思いもよりませんでした」という。

 その言葉が気になって、飛行機に乗って2時間半。私は九州の最南端の県に着いていた。
 ちょっと寄り道した鹿児島の温泉地は、夕暮れ空のあちこちに、もくもくと吹き上がる煙のようなもの。もちろん温泉の蒸気である。今現在もこの地中深くで、マグマが活動しているんだなぁ、と実感せずにいられない「熱い」感じ。そんな土地と水と空気に育まれる野菜や肉は、エネルギッシュでパワフルな予感がする。

 翌日訪れた「CAINOYA」は、鹿児島市内にある。といっても繁華街からは離れた場所に建つそうで、地元の人にとっても、ここで食事をするためにわざわざ行くことになる。遅めのランチに滑り込んでドアを開けると、ゆったりとした空間が広がっていた。
 階段から下りていくアプローチや、半地下だけれど自然光が降り注ぐ採光の良さ、テラスもある。サーラの真ん中に置かれたサーブ台もイタリア的で、嬉しくなった。

2_33 「CAINOYA」は、鹿児島の繁華街からひと息離れた場所に建つ。広い階段を下りたところにテラスがあり、全体にゆったりとした空間使い。

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シェフズテーブルでもあるカウンターは、キッチンが丸見えの隠れ特等席。椅子のフォルムも美しい。


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半地下ながら自然光がたっぷり入るこの開放感は気持ちいい。

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フロアの中央には、丸テーブルのディスプレイ兼サーブ台が。近くの川原に群生しているという菜の花が、盛りの美しさだった。


 オーナーシェフの塩澤隆由さんは、イタリアにとても敬意を払っている。
 とくにトスカーナにはことのほか思い入れと愛情が深い。初めて訪れたトスカーナに感動し、すぐに半年後、再び同じ場所に飛んでいったくらいの人だから、もうビビビと雷に打たれてしまったに違いない。
 以来、年1回のイタリア研修旅行でもトスカーナは欠かさない。将来、モンタルチーノに店を出すのが目標。それも近い将来に、本気で考えているという。
 鹿児島は、やっぱり「人」も熱そうだ。

2_30Photo_289ワインセラーはこの広さ。100銘柄のワインを貯蔵し、近々WEB上で販売もする予定。

イタリアで買ってきたパスタの道具が飾られて。



2_32シェフが訪れたフリウリ・ヴェネツィア・ジューリア州のカンティーナ「VENICA E VENICA」のサイン入りワイン。CAINOYAにリストアップされているワインの、ほとんどの生産者を訪れているという。

2007年5月 10日 | | トラックバック (0)

2006年10月16日 (月)

#8-4 長野県 DANLO 番外編

■清水牧場

 「DANLO」を教えてくれたのは、清水牧場さんだ。
 清水則平さん、晴美さん一家が経営する、長野県のチーズ工房。東京で何度かお取り寄せしたことがあるのだが、牧場から届くチーズの箱には、いつも何かしら季節を感じさせる草花が添えられていた。春には桃の枝、冬には松ぼっくり。チーズを注文して受け取るだけでなく、牛たちが暮らす山はどんな風が吹いているんだろう、と少しだけ想像してみることができるのだ。

 現地に行きたいと言い続けているうちに、しかし清水牧場さんは昨年、同じ長野県御牧原というところからさらに奥地へ、牛ごと引っ越してしまった。噂ではちょっとした秘境らしい。なんでも冬は積雪2メートル、気温は-25℃にもなるとか、冬の間はテレビもラジオも電波が入らないとか?

 はたして松本市内から車で約1時間半。途中、舗装が途切れて砂利道になり、がっくんがっくんと首を上下に揺らしながら到着した清水牧場。
 そこには北アルプスの山があり、森があり、谷があり、川が流れ。人間と牛と羊のログハウスは、自然から間借りしているような謙虚さでちょこんと建っていた。

Photo_246 北アルプスに抱かれるようにして、チーズ工房が1軒建っている。空気Photo_247がとてつもなくおいしい。
 






清水則平さん、晴美さん夫妻はニコニコととても穏やかなご夫妻。で、働き者!こんな環境で暮らすと、人間もストレスフリーになるのかも。



Photo_275Photo_274 牧草地に続く森では、小川が流れていたり。水は冷たくて澄んでいて、おいしそう。

牧草地へは、チーズ工房からさらに1kmほど上ったところにある。普通乗用車では行けないため、軽トラックで。私は荷台初体験。Photo_257

 
果てしなく続く牧草地。牛がいない!と思ったら、遙かかなたに胡麻より小さい点のような姿が。ここからは徒歩で、ふかふかの牧草地を上りました。

 清水牧場は、標高1400~1800mにかけた山にある。
 敷地は約60ヘクタールもの広さ。そこに牛がたった30頭、悠々と放牧されている。野生に近い土地には深い森や川も含まれ、牛たちは北アルプスの伏流水をごくごく飲んで、おいしい草も食べ放題。

 高地ゆえ雑草が生えず、蚊などの害虫もいないのだとか。毎日ストレスフリーでのんびり過ごし、森の中を通って牛舎に帰る。なんてしあわせな牛たちだろう。
 清水夫妻もこの環境と、水の良さでここに決めたのだとか。
 水を飲ませてもらったら、やわらかくするすると体にしみこむような、清冽な水だった。

 スイス産の原種に近いブラウンスイスという種の牛は、乳量はホルスタインの半分以下ながら、甘みがあって質が高い。
 清水さん夫妻は以前からこのブラウンスイス牛を育てていたけれど、ここへ移って、この土地で放牧させるようになってからさらに乳の味が変わったという。

 「放牧時期は6月頃からですが、今年放牧させてから搾ったミルクは、甘くて、雨上がりの草のような匂いがむせかえるよう。色も濃い黄色で、全然質が違うのに私たちもびっくりしました」と晴美さん。そのミルクで作った山のチーズがそろそろ食べ頃、と聞いて、いただいて帰った。

Photo_265 可愛いブラウンスイス種の牛たち。種の特徴として肉づきは少ないけれど、乳房は張っている。この自然の中で、のびのびと育ってます。
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清水牧場では羊も飼っていて、春限定で羊乳のチーズも販売。

 

 数日後、東京のマンションの一室に、ぱぁっと発酵したミルクの香りが広がった。濃厚で香りの強い、むっちりとしたチーズ。おいしい草を食んで、歩きたいときに歩き、飲みたいときにうまい水を飲む、しあわせな牛だからできる味。

 清水牧場さんは時代とだんだん逆行することで、どんどん進化している気がした。

【ドリンクヨーグルト生乳100%】
Photo_267冷えたドリンクヨーグルトをいただいた。生乳のコクもさることながら、甘みと香りの濃厚さにびっくり。1個(500cc)500円。






【山のチーズ】
Photo_268Photo_269ウォッシュタイプの山のチーズは、3ヶ月熟成の半硬質チーズ。塩水でウォッシュし、乾燥させてから熟成庫へ。そのまま食べてもむっちりとした食感とコクを楽しめるけれど、「DANLO」ではこの山のチーズをこんがり焼いたソテーでいただける。(→ #8-2)トロリとしたところをパンと一緒に食べても美味。1カット(200~250g)1300~1600円。

清水牧場の山ののチーズ】
Photo_270森のチーズは、ウォッシュタイプ好きにはたまらない強いクセのある香り。塩水によるウォッシュで、こちらはソフトタイプ。「DANLO」でも、バッカス(6ヶ月以上熟成の硬質チーズ)とともに提供。1ホール(250~350g)1825~2475円。



【20kgのチーズ】
20kg_1ただいまチャレンジ中という、1ホール20kgの超大型チーズも。完成が待たれます。






【プティニュアージュ】
Photo_271その日の朝に搾ったミルクで作り、即日発送するプティ ニュアージュ。乳清からから作る、いわゆるリコッタチーズですが、清水牧場のプティ ニュアージュは5日以内に食べるべし。ふわふわの食感、ミルクの濃厚な香りとコク、そして優しい甘み。はちみつやメイプルシロップ、ヴィンコット(葡萄果汁を煮詰めたもの)などをかけても美味ですが、トリッパ隊はフルーツシュガーをかけていただいたとか。香りが際立ちそう。


DATA
清水牧場 チーズ工房

長野県松本市奈川51
Phone 0263-79-2800 Fax 0263-79-2801
10:00~17:00 火曜休(祝日の場合は営業)
JR松本駅よりクルマで約1時間半

2006年10月 16日 | | トラックバック (0)

2006年10月13日 (金)

#8-3 長野県 DANLO

■イタリア田舎料理を

 どうして「DANLO」? とは、よく聞かれる質問らしい。
 「うちの店には暖炉はありません。でもこの店そのものが暖炉のような、人が自然に集まる場所、ほっとくつろげる空間でありたいこと。またイタリア語でなくみんなにわかってもらえる店名で、男性的で力強い響きが、僕の目指す骨太な料理にも合うと思って」
 松本シェフが目指すのは、イタリアの一地方の郷土料理というわけでなく、地産地消の田舎料理というスピリット。その、諏訪バージョンだそうだ。

 「正直言って夏は溢れるほど野菜がありますが、これから冬にかけては穫れる野菜の種類も減ります。でも、今やれることをやろうと」
 秋は野菜の代わりにキノコがおいしい。冬になればジビエも獲れる。1年を通して食材が移り変わり、メニューも変わるのが自然、という考え。だから四季折々に楽しみがもてる。

+++ ある日の「DANLO」でのディナー +++

Danlo_5【前菜の盛り合わせ(1人分)】
しめさばのマリネと米のサラダ
地元・茅野市で作られる米沢米に赤ワインヴィネガーを利かせ、酢飯に近い感覚のサラダ仕立てに。その上には昆布締めのしめさば。



舞豚のテリーヌ
手頃で歯ごたえがあり、適度な脂もついている腕の部分を使用。粗めのミンチにローズペッパー、ポートワイン、卵を加え1日マリネする。ねっとりとしたうまみと、ローストした松の実の香ばしさ、歯触りが楽しい。

わらさのカルパッチ
「ナイフとフォークで、自分で切った方が美味しいと思って」と、これまた2~3cmの分厚さに。塩、E.V.オリーブオイル、そしてかぼすの酸味がスッキリ。

モルタデッラ(イタリア産)
豚肉のミンチに豚の喉の脂身を加えて蒸した、ボローニャ産のサラーメ。

カポナータ
ズッキーニ、ナスの旬は、カポナータが一番おいしい時期。素揚げしてから、白ワインビネガー、フレッシュトマトなどと一緒にマリネする。

プチトマト、クレソン
クレソンは山の小川に自生しているものを採っている人がいる。野菜は茅野の市場で買うことが多い。そば殻や寒天のくずを肥料に使ったり、つねに挑戦している宮坂農園など、パッションのある農家から直接買うことも。

【 パンチェッタ、ブロッコリー、じゃがいものスパゲッティ 1260円】
Danlo_10 甘みの強いアンデス(ジャガイモ)と、パンチェッタの塩気、グラナパダーノのコク。ブロッコリーは茹でて熱々のにんにくオイルをかけ、ニンニクと野菜のブイヨンでまとめたパスタ。
アンデスは水分が少ないため、9月からはニョッキに使うそうだ。舞豚のラグーで鬼に金棒。






Danlo_7【舞豚バラ肉のボリート 温野菜添え 2400円】

舞豚バラ肉と香味野菜、じゃがいも、ささげ、白インゲン豆などと煮込んだボリート。綺麗に澄んだ黄金色のスープは、雑味やしつこさがなくすっきりとした味わい。肉はしっとりとやわらかく、きっちり利かせた塩が肉のうまみを堪能させてくれる。写真はスモールポーションにしてもらったものです。
このほかスペシャリテには「舞豚骨付ロースのグリル」が。塊肉を豪快に焼き上げる。2~3人でどうぞ。

Danlo_8【桃のコンポート ジュレ添え 525円】
長野県の桃(あかつき)は、固いのに甘い品種。白ワインと水とレモン、バニラビーンズ、グローブを沸かしたところに皮ごと入れて煮ると、皮からピンクの色が出る。常温に冷まし、煮汁のジュレと提供。ヨーグルトのシャーベットをのせて、爽やかな晩夏。



 
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--シェフPROFILE--
松本 武 takeshi matsumoto
1973年生まれ。埼玉県出身。調理師専門学校卒業後、東京・西麻布のイタリア料理店「オステリア・ダ・ヴィンチ」で3年働き、豊田英司シェフに師事。その後、広尾「フィアンマ」で2番手として1年半、恵比寿「パルテノペ」に8ヶ月勤めたところで豊田氏から声がかかり、表参道のフレンチ・イタリアン「アニヴェルセル」で2年勤務。2005年10月、上諏訪に「DANLO」オープン。


DATA
イタリア田舎料理 DANLO

長野県諏訪市大手2-16-12
Phone 0266-53-0021
17:30~23:00LO 日曜休
ディナーコース3675円~(要予約) アラカルト中心
25席

2006年10月 13日 | | トラックバック (0)