2010年12月21日 (火)

【ゲスト/静岡】新年を迎える日本茶

こんにちは、ゲストアンバサダーのかなざわゆうです。2010年も残すところあと少しですね。そこで今日は、「正月に飲むお茶」をご紹介したいと思います。

まず一つ目は、緑茶。日常のお茶は、安さや手軽さが選ぶポイントになるかもしれませんが、正月のようなハレの時には、ぜひ、いつもより少し上等なお茶を、“丁寧に”淹れて召し上がってみてください。

01新鮮なおいしい水でお湯を沸かし、お気に入りの茶碗を使い、少し時間を置いて、湯冷ましをして――。そっと心を落ち着かせながら、お茶を淹れる。丁寧に淹れたお茶の中には、これから訪れる楽しみや喜びの味(甘み・旨み)や、失敗の味(渋み)や、先輩からの苦言の味(苦み)が含まれていて、それらをそっと口に含むことで新たな気持ちになれると思うのです。

写真のように、正月には器を変えみるなど、いつもと違った雰囲気で楽しんでみるのもいいですね。

緑茶の香りは、鼻から嗅ぐ刺激的な香りではなく、口の中から鼻に抜ける淡い香りを愉しむもの。一時口を閉じて、深呼吸をしてみてください。静かにすーっとしみ渡る幸せを味わってほしいのが、新年のお茶です。

02もう一つは、昔から正月に飲まれている大福茶(おおふくちゃ)。お茶の中に梅干しや昆布を入れたもので、無病息災を願って頂きます。決まりはありませんので、お茶はお好みのものを。お茶と塩は相性がいいので、お子様からお年寄りまで喜ばれます。

お好きなお茶に、梅干しと塩昆布を入れれば大福茶に。お菓子には、縁起のよい茄子の砂糖漬けを。

たった一杯のお茶ですが、そこに気持ちを込めることで、相手を想う意味のある一杯になる。お茶は日本的な、やさしい飲み物だと思いませんか?

12月も下旬に入り、慌しい日が続く毎日。焦った時ほど、心落ち着かせるお茶の効果が抜群です。忙しい日々の中で、ほんの5分でいいのでお茶の時間を用意してみてくださいね。(かなざわゆう)

| | トラックバック (0)

2010年12月 8日 (水)

【ゲスト/静岡】日本茶+みかんの皮

こんにちは。ティーライフナビゲーターのかなざわゆうです。今回は、「お茶と異素材の関係」について紹介します。

02_4紅茶にフルーツの香りがプラスされると、華やかで相性がよさそうに感じますが、それが緑茶になると、なんとなく違和感がある気がしませんか?? でも、紅茶も緑茶もすべては同じ植物から作られたお茶。違和感は私たちの頭の中にあるだけで、海外では当たり前のように、緑茶に砂糖を入れて飲んでいます。

浅蒸し煎茶+みかんの皮。乾燥みかんは、食べる前にみかんを洗っておき、むいた皮を小さくちぎってから乾燥させます。


わが家には無農薬で育つみかんの木があり、今年はたくさん実を付けました。食べておいしいのはもちろん、いつも皮までしっかり楽しみます。

03_7乾燥させたみかんの皮を、緑茶やほうじ茶に数枚入れて香りづけに。新鮮な柑橘系の爽やかな香りは、緑茶とも相性がいいんですよ! 夜は「ほうじ茶+みかん」の皮+ローズで清々しさに甘い香りをプラス。

国産烏龍茶+摘みたての金木犀+ぶどう。金木犀の香りに包まれて、幸せな一杯です。

皆さんも料理をするイメージで、お好きな味を組み合わせて自由にお茶を楽しんでみてくださいね。玄米茶だって、緑茶に玄米の香ばしさをプラスしたミックスティーの一つ。そう考えると、いろいろなアレンジができる気がしませんか?(かなざわゆう)

| | トラックバック (0)

2010年10月21日 (木)

【ゲスト/静岡】お茶うけとの相性

こんにちは。ティーライフナビゲーターのかなざわゆうです。食欲の秋になりましたね。お茶うけにも、芋・栗・かぼちゃが喜ばれる季節です。前回は深蒸し煎茶と浅蒸し煎茶についてご紹介しましたが、今日はお茶うけとお茶の相性についてお話します。

ところで、芋・栗・かぼちゃ。この3つの共通項は何だと思いますか? 答えは、どれもパサパサして粉っぽく喉が渇くこと! 特に和菓子の場合は、脂肪分を加えないため喉の通りが悪いので、“添え”であるお茶が重要な役目を果たします。

01 先日、毎年恒例の栗の渋皮煮を作りました。作る過程で皮がはぜてしまったものは、少量の砂糖と一緒に潰し、栗餡にしました。潰した栗は風味がどんどん抜けていきます。そういうときは、繊細な甘さや風味を楽しめるよう、“添え”のお茶は、同じく繊細な風味の浅蒸し煎茶でバランスを取ります。

*栗餡をラップで巻いて栗きんとん風に。甘みが薄く淡い栗の風味を楽しむために、繊細な浅蒸し煎茶を添えました。

02また、栗餡に生クリームと砂糖、香り付けにブランデーを加えたマロンペーストは、濃厚さが加わるため洋菓子のように利用できます。この時には、和紅茶(国産の紅茶)を濃い目に出してミルクティーに。和紅茶は濃く出しても苦渋みがないため、お子様でも楽しめます。

*栗餡に生クリームと砂糖を加えて、濃厚なマロンクリームに変身。バンズに塗っていただきました。濃く入れた和紅茶にミルクを入れて洋菓子風に。


03 甘くした渋皮煮は、渋皮が栗の風味を閉じ込めてくれるため、しっとり感も風味も強く保たれています。だからお茶は、がつんとした深蒸し煎茶でも、栗の風味が負けません。ちなみに抹茶を合わせる場合は、お茶うけの甘さをもっと強くした方がバランスがよくなります。

*保存用に甘みを強くした渋皮煮は、栗の風味も一番強いため、ガツンとくる深蒸し茶にも負けません。

セレクトするお茶を変えることで、お茶うけのおいしさが倍増するのです。全ては“バランス”。スイーツ好きな方は、お茶の見立てができるとさらに楽しみがパワーアップしますよ。(かなざわゆう)

| | トラックバック (0)

2010年9月10日 (金)

【ゲスト/静岡】深蒸しVS浅蒸し

みなさんこんにちは。静岡のかなざわゆうです。今回は、伝統的な「緑茶」についてご紹介したいと思います。それでは本日も、まずは言葉の定義から。

01_4緑茶とは、『刈り取った新芽をフレッシュなまま熱処理をして作るお茶の総称』です。具体的には、煎茶・玉露・かぶせ茶・茎茶や粉茶など。緑色じゃなくても、ほうじ茶もこの分類です。

先月の記事に、深蒸し茶は日本茶の業界では新製法だと書きました。深蒸し茶とは、「煎茶」をさらに2つに分類したときの製法名で、濃い緑色をしているのが特徴です。

こちらは深蒸し茶。緑色が濃く、渋みが少ないのが特徴です。

戦後、都会のカルキ臭の強い水にも負けない味のお茶を作りたいと、東京の茶専門店と静岡県の生産者が創り出した製法で、東京を中心に関東では大人気となりました。

02それに対して伝統的な煎茶は、新芽をさっと蒸して作る、浅蒸し製法。昔は、良質なお茶は、白水(はくすい)や、銀を引く色といい、茶液はうっすらと黄金色が出ている程度がよいとされていました。

こちらの写真は浅蒸し茶。透明感があり香りが高く、余韻が長いのが特徴。

できるだけ茶葉を刻まず、そっと揉みほぐすように揉むことで、茶葉のエキスだけを湯の中に浸み出させたのです。そういう茶葉は、お湯を注ぐと新芽の形に戻り、食べるとシャキシャキとした青菜のような食感です。

03市販茶ではなかなか手に入らないものですが、こちらも浅蒸し茶です。色の薄さに反して、味は濃い!んですよ。

深蒸し煎茶は渋みが弱くマイルドで、色の濃さがおいしさとなり、一方、浅蒸し煎茶は香り高く、淹れ方次第で甘みと渋みのコントラストを楽しめます。

どちらもそれぞれのよさがあるので、料理やお菓子に合わせて選べるよう2種類常備するのが、私のおすすめです。(かなざわゆう)

| | トラックバック (0)

2010年8月30日 (月)

【ゲスト/静岡】日本茶は特殊製法!

----------------------------------------------------------------
●かなざわゆう:ダロワイヨに就職、紅茶やワインの勉強をするうちに日本茶への興味が募り、静岡へ移住。問屋小売業・製茶農家に研修に入り、日本茶インストラクター制度の発足とともに第一期生で資格を取得する。「世界から見た日本のお茶」をキーワードに、イベント企画やコーディネート、各種セミナーを行う。農家が作ったお茶の楽しみ方を広めようと、様々な活動を展開中。著書「東京の日本茶カフェ」
----------------------------------------------------------------

最近、日本茶への興味が国内外で高まっていますが、「日本茶ってわかりにくい」というお声もいただきます。ここでは私流に、知っていそうで知らなかった日本茶の話を紹介させて頂きますね。まずは改めて、言葉の再定義を。

日本茶とは、『日本で作られた茶の総称』です。

2 歴史は1200年ほど昔、空海・最澄といったお坊さんが、禅の修行に利用するために伝えたといわれています。蒸した茶の葉を団子のように突き固めて乾燥し、飲む時に粉にして利用しました。これは抹茶のルーツとされています。日本の抹茶は、中国から入って来た製法を基礎として、日本独自に進化したお茶のスタイルです。

ちょっと時期外れですが、写真は春の茶畑の様子です。目を見張るほど鮮やかな緑です!

現在の主流となる日本茶の製法は、摘み取った新芽をできるだけフレッシュなまま“蒸す”ことで、鮮やかな緑色と新鮮な青葉の香りを保つのが特徴です。“蒸す”という製法もルーツは中国ですが、現在中国では廃れてしまい、世界で唯一、日本だけが作り続けている特殊な製茶方法になります。

中国で一番多く作られているお茶は緑茶ですが、“釜炒り”という芳ばしさを出す製法ばかりになっています。

3_2中国本土に比べ、日本は山と海が近く、川の流れにも勢いがあります。そのためか、刺身などのような新鮮な食材をより好む傾向があるように思います。今も昔も植物の生理として、春の新芽は味が濃かったのですが、その若葉の香りをなんとか茶葉に閉じ込めようと、先人たちが工夫を重ねて来たことが、現在日本が世界で唯一のお茶作りをするようになった理由かもしれません。

茶碗の中の緑色の濃い緑茶(深蒸し茶)を見ただけで、「おいしそう」と感じませんか?


深蒸し茶は、日本茶の歴史の中では最近できたばかりの新製法ですが、日本人としてのDNAが、新鮮な緑色に反応するのかもしれませんね。(かなざわ ゆう)

| | トラックバック (0)