2011年1月31日 (月)

【愛知】すっぽん鍋でパワーチャージ

こんにちは。愛知県のアンバサダー、dannaです。寒い日が続いるので、冬にうれしい「天然スッポン鍋」をご紹介します。

01_4すっぽんといえば愛知県浜名湖の養殖も有名ですが、琵琶湖の天然すっぽんが素晴らしいのです。滋賀県大津にお店を構える「きたむら」さんは、名古屋から1時間ほどの、天然スッポンの専門店。お店に着くとまず、その日のスッポンを見せてくれます。

養殖の1~2年ものとは違い、天然の4~5年ものは土鍋ほどの大きさ!

元気なスッポンは瞬く間にお刺身、鍋の材料に変わり、血も内臓もすべてその日訪れたお客で食べ尽くします。お刺身、火を入れた内臓を前菜にいただいたら、いよいよ「すっぽん鍋」へ。特徴はとにかく澄み切っていること! 最初にお鍋に入るのは、「スッポン」「井戸水」「醤油」だけと、限界までそぎ落とされているんです。

主役は何より、お出汁。口に含むと、極上のコンソメのように澄み切っているのに、複雑な甘い香りがします。スッポンの身は濁りがなく、肉、皮、骨、脂から純粋なおいしさがスープに染み出ています。唇にはかすかにゼラチンの上品なねばりが。

02コラーゲンの塊りであるエンペラや皮、よく動く首や脚、関節を部位ごとに味わったら、次は野菜です。自家栽培の野菜を使っていて、九条葱や白菜、しいたけなど収穫したばかりの野菜をたっぷり使います。

旬の素材を、旨みが出たスープでいただく幸せといったらありません!

〆はもちろん雑炊。壬生菜のお漬け物と一緒に食べると何杯でも食べれてしまいます。これからの季節、寒くなればなるほど野菜は甘くなり、スッポン鍋で体を温めるのにもバッチリ。年中おいしいと聞いても、やっぱり冬に行きたいお店なのです。(danna)

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2010年11月 2日 (火)

【愛知】医食同源の石頭火鍋

愛知県のアンバサダーdannaです。日に日に寒くなってきた今日この頃、恋しくなるのは「鍋」ですよね。今回は、食べると元気になるお鍋をご紹介したいと思います。

お店の名前は、台湾薬膳料理『満拿』。名古屋で店を構えて30年以上。開店以来漬け汁を守り続けている台湾蜆(シジミ)、牡蛎の青海苔炒めなど、ご主人の料理はどれも滋味深くておいしい。

看板料理の「石頭火鍋(スートーホーコ)」は、“油をほとんど使わず薬膳生薬の味、香りで食べる”のが特徴で、とことん体にやさしい薬膳鍋です。

01_2真っ黒な石鍋で最初にいただくのは、特製のタレに漬け込まれた飛騨牛。タレは20種類以上の食材生薬からなるそうですが、何がブレンドされいるのかは何年通ってもまったく謎…。複雑な香辛料の香りを中心に旨味、甘味、酸味、辛味すべてが存在する唯一無二の味です。

写真は、謎の特製タレに漬けられた飛騨牛。

02牛肉を食べ終えたら、生薬スープを注ぎ、海鮮、野菜、練り物などを加えます。食材が足されるごとに旨みが増しながらも、決して濃くなりすぎず、最後まで滋味を味わう鍋となるのは、なによりやさしいスープのおかげ。派手な食材があるわけではないのに、旨みが強く、驚きと満足が押し寄せます。

様々な食材の入った鍋。仕上げは古代米を使い、食感のよい雑炊でいただきます。

でも実は、本当に驚くのはその翌朝。お酒を飲んだのに体がすっきり。肌にはハリが出て、体の中からきれいになった気がするのです。満拿の薬膳料理は、薬くさくないのも特徴。おいしく食べて、体も元気になるなんて最高ですね。

台湾薬膳料理 満拿(まんな)
愛知県名古屋市中区栄4-5-22はとビル5F
052-242-0384

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2010年9月 3日 (金)

【愛知】ワタリガニで酔蟹

東海地区でも伊勢湾、三河湾でたくさん穫れる「ワタリガニ」。とくに6月から9月くらいになると、町の鮮魚店でも活きたワタリガニが手に入るようになります。この時期になると僕の夏の楽しみが。そう、今年もワタリガニで「酔蟹(酔払い蟹)」を作ります。

001「酔蟹」というと中国で上海蟹を紹興酒に漬けたものが有名ですが、ワタリガニで作ってもおいしく、食べ応えがあります。ポイントは必ず“生きた”蟹を使うこと、そして蟹にお酒をたっぷり飲ませ、腐らないように漬け汁に完全に浸けることです。これだけ守れば驚きの美味を楽しめます。

写真は蟹を漬けているところです。こうしてたっぷりの漬け汁の中に蟹を沈めるのがポイント。

今回手に入れたのは愛知県の師崎(もろざき)で揚がったワタリガニ10杯。生きたまま足を縛ってタワシでよく洗い、紹興酒、醤油、三温糖、ネギ、ショウガ、花椒を調合した漬け汁に沈めます。

蟹が浮かないよう落とし蓋で押さえ、時々かき混ぜながら冷蔵庫で一週間以上漬ければできあがり! 食べ頃は一週間後から二週間目あたりです。

002取り出した蟹をばらして生のまま身を吸うようにして食べるのですが、このおいしさをどう表現すれば良いのか!

水分が抜け、食感がボタン海老のようにむっちりと変わり、繊維の中から味が染み出て、蟹自体が別物に変わったようです。蟹味噌も内子もさらに濃厚に風味よく変わり、驚きで目が丸くなる。思わず「おぉ~」と唸ってしまう、美味で珍味な一品です。

ちょっと写真が明るくなってしまいましたが、こちらが唸ってしまう蟹味噌。

生きたままなのでちょっとかわいそうかもしれませんが、「自家製のワタリガニの酔蟹」絶品です。(danna)

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2010年8月 6日 (金)

【愛知】豆乳納豆バジル蕎麦

01さて今回は、うだるような暑さのこの季節を乗り切る、私の自慢のレシピをご紹介します。その名も「豆乳納豆バジル蕎麦」!!

豆乳に納豆にバジルに蕎麦!? と、最初は誰も信じてくれませんが、一度食べればそのおいしさと楽しさに驚いてくれるはず。『料理通信』2009年11月号掲載の「分とく山」の野崎さんの「納豆サラダ」を元ネタとして、偶然生まれた奇跡のレシピです。
【写真】レシピのヒントになった『料理通信』2009年11月号(P100)

豆乳納豆バジル蕎麦は、試してくれた方々からもとても好評で、なんと、海外のフレンチで活躍しているシェフにも太鼓判をもらいました。皆さんも是非、試してみてくださいね。

<豆乳納豆バジル蕎麦>

◆材料(一人分)
  ・蕎麦乾麺 100g(茹で上がり200g)
  ・調整豆乳 90cc
  ・納豆 1パック 
  ・タマネギのみじん切り 大さじ2 
  ・出汁醤油 大さじ2
  ・フレッシュバジルの葉 大7、8枚

◆作り方
(1)鍋にお湯を沸かし、蕎麦を茹でる。タマネギは粗くみじん切りにして水にさらしておく。納豆はよくかき混ぜておく。
(2)茹でた蕎麦を冷水でしめ、よく水気を切る。
(3)蕎麦、豆乳、納豆、出汁醤油を合わせ、よく混ぜて泡アワにする(この泡が大事!)
(4)(3)を皿に盛り、水を切ったタマネギと、ちぎったバジルをたっぷり盛りつける。

02【写真】完成写真。泡アワが消えないうちに食べましょう!!

豆乳の濃厚さとバジルの爽快感を、カプチーノ状の泡がつなぎ合わせているのがポイント。タマネギのアクセントもよいですが、何より最高なのがバジル。蕎麦にバジルがこれほど合うかと初体験の驚きを与えてくれるはずです。

一番の売りはおいしさですが、5分で完成する簡単さ、バジル以外の材料はコンビニでそろえられる手軽さ、豆乳・納豆・蕎麦というヘルシー食材なのに満足感があること、とよいことづくしのメニュー。これは冷やし中華を越えた! と思っています。コンビニで販売してほしいくらいです(笑)。

盛大に自画自賛しましたが、おいしさは保証します。夏バテさん、メタボさん、美白さん、に特におすすめ、是非試してみてくださいね。(danna)

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2010年7月 5日 (月)

【愛知】桑名の天然蛤しゃぶしゃぶ

Hamaguri1_2 桑名の名前は東海道四十二番目の、そして唯一の海路(熱田宮ー桑名)の宿場町、として有名ですが、それ以上に有名なのが「その手は桑名の焼き蛤」。江戸時代からあるこの言葉、実は今でも現役なんです。「蛤なんてどこでも食べられる」かもしれません。でも実は99%は輸入もの。貴重な「ヤマトハマグリ」を今も守り続けているのが桑名なんです。

そんな桑名で私がおすすめしたいのが「割烹 日の出」の「蛤しゃぶしゃぶ」です。「蛤が完全に主役、すべては蛤をおいしく食べるためだけの鍋」。これほど貝が主役の鍋というのも珍しく遠方からお客様でもきっとそのおいしさに驚かれます。春先のイメージがある蛤ですが、こちらでの旬は産卵を直前に控え玉のように膨らんだ6、7月が最高です。
「日の出」の天然はまぐり 

「日の出」での蛤はもちろん天然桑名産で3~5年もの。写真のように模様が非常にはっきりしているのが「桑名産蛤の特徴」です。追加の焼き蛤にはもう少し大きな7年ものを使います。「蛤しゃぶしゃぶ」はシンプルな鍋。たっぷりのお出汁を張った鍋に人数分の蛤を入れ、口がひらくとすぐに取り分けて頂きます。味付けもせずにただそれだけなのにとにかく旨い。産卵直前の蛤は熱を含んで更に膨らみピンポン球のよう。蛤ははちきれ、溢れ出る汁は旨みがたっぷりで身は甘く、ワタや卵は濃厚です。とはいえ蛤の特徴としてはとても澄んだ味。鍋は仲居さんに任せ私たちはひたすら純粋においしい蛤を何度も堪能すればよいのです。しゃぶしゃぶが終わると鍋には蛤の出汁が出ています。後半はその出汁を味わう鍋になります。葛きり、三つ葉、豆腐、ネギといずれも淡泊な食材に順に出汁を吸わせて味わい、そして最後は蛤雑炊となります。おいしくないわけがありません。初めての方は「本当に貝だけ?」と不審そうなことも。でも帰る時には「これほど貝で満足、満腹になったことはない」と、皆さんが次回の予約を入れたがるというのもよく分ります。

Hamagurifunyu_2 今回は桑名の蛤を使って「桑名の蛤と中国野菜の腐乳炒め」を作ってみました。腐乳の発酵した旨味と蛤からできたエキスの相性がよくお酒にもご飯にもよく合います。贅沢をしてしまった。最後に、一度は絶滅寸前まで減った「桑名の蛤」を復活させた桑名の方たちの努力に敬意を表して終わりたいと思います。(danna)
桑名産蛤と中国野菜の腐乳炒め

●割烹・季節料理 日の出
三重県桑名市川口町19
0594-22-0657

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2010年6月11日 (金)

【愛知】帰ってきたイタリアンの名店

Gallura_2 名古屋のレストラン激戦地の池下地区。数々のイタリアン、フレンチの 人気店が並ぶこの地区に、かつてもっとも人気でもっとも予約のとれないイタリアンの名店がありました。その名は「ガッルーラ」。しかし 2008年8月末に突然の閉店。多くのファンを悲しませました。 そのガッルーラがこの春いよいよ帰ってきました。名古屋の閑静な住宅街(名古屋市昭和区山里町)に居を移しての再開。4/6のオープン初日から名古屋のグルメ、イタリアン好きがこぞって訪問し1 カ月ですでに予約困難な店の復活です。
軽く燻したフォアグラとフレッシュマンゴーのサラダ。栃の実蜂蜜と上質なオリーブオイル

なぜそれほど「ガッルーラ」が人気なのか。それは「とにかくパスタがとてもおいしい。加えて、華やかな前菜が気分を盛り上げ、メインの肉料理もしっかりと旨い」からでしょう。また、地元三河の食材はもちろん、様々なこだわりの食材と調理法によるヴァリエーションに富んだ料理も、ファンを楽しませ続けている理由だと思います。

まずは楽しさと華やかさがある組み合わせの前菜。代表はなんといっても「フォアグラマンゴー」でしょうか。これからの季節は沖縄から完熟マンゴーが入ってくるのも楽しみです。「三河湾の魚介類のサラダ」もまるで三河の海の幸をすべていただいてるかのようなはなやかな一皿。そして、パスタは定番の蟹のキタッラ、牛テールと野菜のウンブリケッリ。滋味深い味と生パスタの変化豊かな食感の組み合わせに、きっと誰もが顔をほころばせます。肉料理は厨房の一角の炭火コーナーで、じっくりじっくりと火を入れられています。前菜やパスタを楽しみながらときどき「おそらく自分の肉」の焼け具合をみるのが私も大好き。期待を裏切らない焼き加減とソースの組み合わせがディナーを最高潮にしてくれます。

Ragout復活した「ガッルーラ」が懐かしくも嬉しくもあり、あんまり感動したので調子にのって私も一品作ってみました。「牛タンとテールと牛蒡のラグー ピーチパスタ」です。もちろんレベルは果てしなく違うわけですが、こんなことをやってみたくなるほど強く印象に残るのがこのお店。訪れるたびにいつまでも記憶に残る料理をきっと提供してくれる、 そしてその料理の話で人と感動を共有できる、そんな数少ないお店が「ガッルーラ」なんです。「ガッルーラ」から生まれた人気店「セルバッジョ」(東区高岳)や「サンタキアラ」(東区徳川町)とともに、きっと名古屋のイタリアンをさらに楽しくしてくれるでしょう。(danna)
牛タンとテールと春牛蒡のラグー、ピーチパスタ

●クッチーナ イタリアーナ ガッルーラ
愛知県名古屋市昭和区山里町70-2 山手アベニュー 2F
TEL:052-833-5855

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danna:料理をとっても愛して生きています。おいしいものあれば飛んで行き、なんなら自分で作ります。中部地方には海も山も川も歴史もあって美味しいものがたくさん。日本舞踊家のTOKOSANと巡った美味しいもの体験を紹介してゆきます。
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2010年2月 1日 (月)

【愛知】名古屋コーチンの味噌鍋

Nagoyakotinお鍋ってその土地土地の特色や歴史が凝縮されていますよね。名古屋の名物のひとつに、味噌とかしわ(名古屋コーチン)があげられます。その両方を使った名古屋らしい鶏の味噌鍋をご紹介いたします。
⇒新鮮な名古屋コーチン

名古屋コーチンの肉は、一般的に弾力性があり、「こく」があるとされています。実は、この名古屋コーチンの歴史は江戸時代にまで遡ります。江戸時代後半の日本では、鶏を飼うといえば、闘鶏用の軍鶏や愛玩用の矮鶏をであって、食用に飼うということはあまりなかったそうです。しかし、尾張藩においては、当時から武士の内職として卵や肉を売るために鶏が飼われていて、尾張藩のサムライ養鶏として有名だったそうです。その後、明治時代になって改良が加えられ現在の名古屋コーチンができあがったそうです。(一般社団法人 名古屋コーチン協会より)

Misonabe_3さて、肝心の鶏の味噌鍋です。八丁味噌の黒々としたタレをご覧になって、「辛そう」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、意外にもこれが濃すぎたり辛すぎたりしないのです。ほんのり甘味もあり、飽きがきません。そしてなんといっても名古屋コーチンとの相性が抜群です。
最後はきしめんを入れて、味噌煮込みうどん風?

まずは鶏の脂身で鉄鍋に皮油を塗り、そこへ鶏のスープを入れ、さらに八丁味噌を溶かします。中に入れるのは、鶏肉・ねぎ・椎茸、焼豆腐といったオーソドックスなもの。八丁味噌のわずかな渋みが名古屋コーチンの「こく」を一段と引き立てて、なんとも言えないハーモニーをかもし出すのです。お鍋の中の複雑な味を吸収したネギの味も格別です。

そして、最後はきしめんを入れて、さらさらっといただきます。寒い日はやっぱり、お鍋。心も体も温まりますね。(大島千世子)

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2009年9月25日 (金)

【愛知】捨てるにはもったいない、小豆の皮の可能性

Kurakin 最近、小豆の搾りカスを利用した素敵なプレゼントを2ついただいたきました。

まずは写真1枚目、「KURAKIN」のミニバックです。お弁当箱を入れるのにちょうど良さそうなバックですが、その特徴はなんといっても色合いにあります。実はこの生地、両口屋是清がお譲りした国産小豆の皮で染められているのです。小豆ならではの温かいレッドブラウンが、なんとも不思議と落ち着きます。

「KURAKINシリーズ」は、明治時代から繊維の町として有名な愛知県・一宮市の艶金興業株式会社が開発、すべての製品に食品の製造過程で生まれた天然色素を使った「のこり染」が採用されています。艶金興業さんは、大地から収穫した食品に対する「もったいない」という想いから、「使われずに捨ててしまう」部分で生地を染める、ということを思いつかれたのだそう。小豆以外にも、ワイン・大豆・栗・パセリなど様々な食物から染物を作っていらっしゃいます。どれも自然な色合いで、手元にあるとほっとします

Azukipotそして、2つ目は「あずきぽっと」です。こちらは、製菓原材料を取り扱う福田商事株式会社(名古屋市)が創立80周年を記念して作られた、廃棄物を再利用した地球に優しい植木鉢。原料は、家庭やオフィスの使用済みOA用紙(40%)、牛乳などの紙パック(30%)、そして、和菓子屋で製餡後に出る小豆(北海道十勝産)の搾りカス(30%)です。花が咲き終えたらそのまま土に埋めれば、微生物の作用によって100%土に戻すことができるとのこと、無駄がありません。

小豆の絞りカス。堆肥などの利用方法のほかにも、アイディア次第でいろいろな活用方法があるものですね。(大島千世子)
↑「あずきぽっと」。やっと芽がでてきました。

●艶金興業株式会社 TEL:0586-62-5211
●福田商事株式会社 TEL:052-582-7051

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2009年8月24日 (月)

【愛知】涼を感じる和菓子

Minazuki 「氷菓」が夏の季語であること、みなさんはご存知ですか? 今でこそ、暑い夏に冷たい氷を食べるということは普通のこととですが、一般の人が氷を夏に使えるようになったのはつい最近。明治維新以後です。本来、冬のものである氷を夏の季語にしたことに、昔の人の氷に対する強い憧れのようなものを感じます。
→「水無月」 両口屋是清製

和菓子にも、この夏の氷への憧れをあらわしたお菓子「水無月」があります。宮中においては夏に氷が使えるようにと冬の間に氷を採取し、氷室と呼ばれる穴室の中で夏まで大切に保管され、夏になると日々、その氷を宮中まで運んでいました。『枕草子』にも「削り氷」といった表記が見られます。しかし、一般の人々は氷など口にすることもできないので、氷をモチーフにしたお菓子を代わりに食べたのです。この水無月というお菓子は、6月30日に神社で行われる「夏越の祓」という年中行事が行われる日に食べられました。これは、お正月からの半年間の穢れを祓うとともに後半の半年間の無病息災を願う行事です。現在でも、6月末になると多くの和菓子店でそれぞれのお店の「水無月」が販売されています。

Muronokoriその他にも、氷をモチーフにした和菓子はたくさんあります。かき氷など氷そのものを食すお菓子もありますが、その多くは、氷そのものではなく何かを氷に見立てたお菓子です。実際には冷たくなくても、お菓子の姿形・菓名などから十分に涼を感じることができる、日本人の感性ですね。(大島千世子)
←「室の氷」 錦玉製のお菓子。両口屋是清製

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2009年7月24日 (金)

【愛知】土用の丑の日

Hitsumabushi1今年は、7月19日、31日と7月に土用の丑の日が2回あるという珍しい年だそうです。土用の丑の日といえば、鰻ですね。夏バテ防止のために土用の丑の日にウナギを食べて栄養をつける習慣ができたのは、江戸時代中期にまでさかのぼるそうです。そのルーツについてはいくつかの説がありますが、有力なのものとしては、江戸時代の学者・平賀源内に由来するものです。知り合いの鰻屋から夏になると売り上げが下がることを相談された源内は、丑の日に「う」のつく物を食べると体によいという言い伝えから、「本日は土用の丑の日」と書いた張り紙を店頭に出したらよいとアドバイスしたところ、その店は繁盛しということです。これを見た他の鰻屋も真似をするようになり、それ以降、土用の丑の日にウナギを食べる習慣が定着したのだそうです。

さて、名古屋の鰻といえば「ひつまぶし」が有名です。「ひつまぶし」とは、ウナギの蒲焼を細かく刻んでご飯にまぶしお櫃に入れたものです。今でこそ、全国的に名古屋グルメのひとつとして有名になった「ひつまぶし」ですが、名古屋では本当にごくごく普通に食べられています。名古屋の鰻は、関東風とは異なり、蒸さずにそのまま焼きます。そのため香ばしく焼けた皮とやわらかい身のハーモニーが絶妙です。一般的な食べ方としては、一杯目はお櫃からそのままお茶碗によそって鰻そのものの味を楽しみます(写真上)。二杯目はネギなどの薬味を加えて新たな味わいを楽しみます。そして三杯目は煎茶(もしくはだし汁)をかけてお茶漬けとしてのさっぱりとした味わいを楽しむのです(写真下)。

Hitsumabushi2浜名湖や一色といったウナギの産地が近くに多いこともあり、名古屋市内には多くの鰻屋さんがあります。店の味は長年守り継がれてきたタレの味によって決まります。地元の知人に聞くと、有名店、老舗店にかかわらず、各人が異なる贔屓のお店があることに驚きます。これこそ、鰻が地域に深く根づいていることの証かもしれませんね。(大島千世子)

3杯目は薬味を添えてお茶漬けで・・・

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2009年6月24日 (水)

【愛知】感性を豊かにする和菓子

Wagashinohi「6月16日は和菓子の日」ということをご存知ですか。食べ手にとっては和菓子をより身近に感じる日、作り手にとってはさらなる精進を願う日として、1979年に全国和菓子協会によって設けられました(詳細は全国和菓子協会のHPをご参照ください )。

長い年月をかけて、日本の四季や年中行事に深く関わりながら進化してきた和菓子は、私たちの様々な感性を豊かにしてくれる存在です。まずは「季節感」。和菓子の世界では、季節を1カ月ほど先取りすることが常であり、それは私たちの思いを移りゆく季節に馳せさせます。例えば、余寒厳しい頃には「早蕨」「春告鳥」など、春のお菓子が店頭に並びますが、それらを召し上がる時、皆さんは間もなく訪れる春の穏やかな陽差しを思い浮かべるのではないでしょうか。

また、和菓子は私たちの「想像力」もかきたててくれます。上生菓子の意匠は花や季節の風情を題材にしますが、そのものずばりの形は表さず、抽象的にほどよく単純化しています。その表現方法が私たちの想像力の扉を開いてくれるのだと思います。そして、「菓銘」に注目すると、さらに想像力が広がることでしょう。菓銘とは、和菓子一つひとつの名前のことで、古典和歌や俳句、名所や花鳥風月などからつけられています。例えば「唐衣(からころも)」という和菓子、これらは愛知県の県花、杜若(カキツバタ)をモチーフにした和菓子ですが、『伊勢物語』の主人公、在原業平の和歌にちなんでいます。

Karakoromo業平がカキツバタの名所、三河八橋(現在の愛知県知立市)を通ったときに「カキツバタ」の5文字を句頭に読み込んで、「から衣 着つつなれにし つましあれば はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ」と詠んだことに由来します。昔の人は「唐衣」という菓銘を聞いてこの場面を思い出し、カキツバタの花が一面に咲いている景色を想像しながらお菓子を食べたことでしょう。現在ではこういった想像をできる人は少ないかもしれませんが、逆にお菓子を通して古典世界を垣間見ることができるかもしれません。
写真上)愛知県の県花でもあるカキツバタをモチーフにした「唐衣」。

小さな和菓子、でも、そこには日本の四季折々の風情と文化が凝縮されています。みなさんも、季節や菓銘の背景を想像しながら和菓子を楽しんでみてください。(大島千世子)

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大島千世子:370余年の伝統を持つ和菓子の老舗「両口屋是清」に生まれる。日本の風土、歴史、文化によって育まれた和菓子には、日本人の季節感や感性が凝縮されています。衣食住において西洋化が進んでいる今だからこそ、日常生活の中にある和の心を大切にしたいと思っています。
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