2010年5月14日 (金)

【三重】伊勢のアサリは手堀りです

Asari1 5月は、潮干狩りのベストシーズン。日照時間が長くなって海水温が上がり、それに伴ってプランクトンも増え、海の中が賑やかになってくる時期です。伊勢湾では、アサリが身を太らせおいしさを増しています。

潮干狩りでは熊手を使ったりしますが、アサリ漁をするプロの漁師さんはどうやってアサリを獲っているのかご存知でしょうか?伊勢湾では、鉄製のクワのような「ジョレン(鋤簾。マグワ、シャックンともいう)」を用います。水深の浅いところでは、腰まで浸かって短いジョレンで、深いところでは、船の上から柄の長いジョレンを使い「手堀り」でアサリ漁を行います。専用のポンプで海底を吹き上げて船で引き廻して獲る「ポンプこぎ網」漁法などの動力機械を用いた漁法もあり、そういった漁法ではたくさんのアサリを獲ることが出来ますが、三重県では原則禁止。昔ながらのジョレンでの「手掘り」漁法を大切に守り続けています。

なぜ手間のかかる手掘り漁法を守り続けるのか!?それには理由が。船などの動力を使って獲ると、勢い余って貝殻を割ってしまったり、また、アサリがビックリして貝殻を急に閉じてしまうので、海水を吸ったり吐いたりする「水管」という器官を傷つけてしまい、出荷前の砂抜きがうまく出来なくなるそうです。手掘り漁ではそういったリスクが少なく、高品質のアサリとなります。手掘りは人力なので生産性は高くありませんが、その分、漁師さんの愛情はたっぷりです。
 
さて、伊勢のアサリの特徴は、手掘り漁で丁寧に獲るため、貝の傷みや砂噛みが少なく高品質というだけではありません。櫛田川や宮川など、いくつもの河川が里山の栄養分を運び込む伊勢湾岸の豊かな自然環境は、甘みに富んだ味の濃いアサリを育てます。特に旬のこの時期の伊勢のアサリは、エサをたくさん食べて、ぐんぐん身を太らせ、殻が薄くても身はぎっしり。ぷりぷりで旨味たっぷりのアサリなので、驚くことに、お酒もお塩も何にも入れずに少量の水で茹でるだけでほんとに美味しいんです。
 
Asari2_3そんなアサリですが、日本のアサリの資源量は、昭和60年を境に激減し、最盛期の4分の1程になっているそうです。伊勢湾でも然り。回復の兆しはみえてはいません。そんな中、伊勢市でアサリの仲買業を営む株式会社荒木海産では、伊勢湾漁協と協力しながら「手掘り」に着目し、漁期、漁場、漁法を限定した伊勢産アサリのブランド化に向け取り組んでいます。「資源が少なくなる中、本当に美味しいアサリを味わってもらいたい」と話す社長・荒木さん。間もなく荒木海産から、「伊勢手掘りあさり」と名付けられた商品が売り出されます。是非一度、少量の水でだけで茹でて、プリップリの伊勢手掘りあさりの濃-い味を堪能あれ。(宮崎達哉)
写真は、「ジョレン」を使った伝統的な「手掘り」漁です。(長いジョレンを使用)

●株式会社荒木海産
〒515-0502 三重県伊勢市東豊浜町2973-412
TEL:0596-37-3511 FAX:0596-37-3522

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2010年4月16日 (金)

【三重】見た目洋風、中身は和風

Isenoshiroki普段はビール派で、日本酒を飲むことは少ないのですが、「活性にごり酒がスパークリングワイン感覚で面白い」という噂に興味を掻き立てられ、全国のこだわりの日本酒が集まる安田屋(鈴鹿市)へ。「初体験の活性にごり酒。どうせなら三重らしいものを飲んでみたい!」と思い、探してみると…。名前からして三重の香りがするものを発見。「伊勢の白酒(しろき)」です。店員さんからの「酵母が生きているので、衝撃を与えると爆発するので危険です。お気を付けてお持ち帰りください。又、飲む直前までは冷蔵庫でよく冷やしておいて下さい。」というアドバイスに従い気をつけてゆっくり帰り、よく冷やして飲んでみることに。栓に「ふき出し注意」とあるので、そっとオープン。栓がキュッと開くと、白く濁った部分から泡がシュワシュワと上がってきます。泡と色が面白いので、シャンパングラスでいただくことに。わくわくしながらゴクリ。お米ならではの甘みの後、グレープフルーツのような苦味が広がり、後味はすっきり。確かに日本酒の味なのだけれど、シャンパングラスということもあってか気分は新境地。今までにない新たなアルコールのジャンルを開拓した気分でした。
「伊勢の白酒」。グラスを良く見るとピチピチの泡が。


Label どういうお酒なのかと気になって、ラベルを見ると、「伊勢神宮の新嘗祭で奉納される古式の造りのにごり酒と同じ仕込み方をしたお酒です」とあります。気になるので、もう少し詳しく調べてみることに。新嘗祭は、11月23日、その年の収穫に感謝する儀式で、伊勢神宮はじめ県下八百十四社で行われるようです。「伊勢の白酒」の製造元であるタカハシ酒造(三重県四日市市)では、新嘗祭当日に奉納される「どぶろく」の御神酒(おみき、「三重の新嘗」と名づけられている)を昭和8年から70年以上もの間、昔ながらの「木桶仕込み」で1年たりとも欠かすことなく作り続けてきたそうです。そして、その伝統技術を用いて生まれたのが、「伊勢の白酒」とのこと。思わずシャンパングラスを取り出した飲み物に歴史と熟練の技が。実はものすごく「和」なものを、「洋」に味わうことが出来る。「なんだか粋なお酒だなぁ」と思ったところです。(宮崎達哉)
伊勢の白酒のラベル。お伊勢さんにまつわるお話が。

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2010年3月12日 (金)

【三重】春を告げるイカナゴ漁

Ikanago 3月3日に解禁となった伊勢湾のイカナゴ漁。天気の良い日は、鈴鹿市から津市の浜辺には、水揚げされたイカナゴが天日干しされています。我が家の食卓に、イカナゴの天ぷらや卵とじが並ぶのもこの時期ならでは。鈴鹿市で生まれ育った私にとっては、まさに春の味覚です。
浜辺で天日干しされるイカナゴ(奥に見えるのが加工場)

イカナゴは、色々な呼び方をされる少しややこしい魚です。私の地域では「コウナゴ」と呼ばれるのが普通ですが、九州では「カナギ」と呼ばれ、稚内では成魚を「オオナゴ」と呼ぶようです。伊勢湾を境に東日本では、イカナゴの稚魚を「コウナゴ」と呼ぶことが多いようです。イカナゴは、冬眠ならぬ「夏眠」をするという変わった性質があることも特徴です。暑さが苦手なため、夏は砂の中で寝てしまうらしく、夏眠期間の約半年間は、全くエサを食べずに過ごすとのことです。

さて先日、三重県津市にある白塚漁港がイカナゴ漁で賑わっていると聞いて、現場に突撃。セリや水揚げの様子を見てきました。朝10時頃、イカナゴを積んだ漁船が続々と入港。次々とセリにかけられ買い取られたイカナゴは、漁港近くに立ち並ぶ加工場に運ばれます。そして鮮度の良いうちに塩茹でされ、天日干しに。以前は、茹でる時に、青色を付けるための着色料を加えるのが普通だったそうですが、近年は、添加物の少ないものが好まれるため、塩だけで加工する業者がほとんどだそうです。

白塚漁港の漁師さんに「今年のイカナゴ漁はどうですか?」と聞いたところ「今年はまずまず。3月いっぱいは漁が続けられると思うわ」「去年はたった3日やったからな…」と仰っていました。伊勢湾のイカナゴ漁は、昭和50年代前半に大不況期を迎え、多くの漁業者が壊滅的な打撃を受けました。原因の一つは、乱獲。これを契機に、三重・愛知両県の漁業者や行政が協力して資源を守り、回復する取り組みが始まりました。今では、漁の解禁前にコウナゴの資源量を把握し、漁獲量の上限を決めて漁が行われています。調査結果によっては、漁が出来るのが3日間だけということも・・・。しかし、このような取り組みの結果、近年では資源回復の兆しが見えてきているそうです。

Seri 春先には「もう十分」という程食べられることが普通と思っていたイカナゴ。限りある貴重な春の恵みをこれからも大切にしていきたいものです。(宮崎達哉)

セリの様子(仲買業者さんが品定めしています)

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2010年2月12日 (金)

【三重】熊野灘発、長栄丸・濱中夫妻の「朝漁れさんまの丸干し」

Sanma_3頭も内臓も取らずに丸ごと干す「さんまの丸干し」は、まさに熊野の冬の味覚。丸干しが食べられるシーズンも残りわずかとなってきました。三重県南部に広がる熊野灘。さんま漁発祥の地と言われ、約300年前の江戸時代に、この地方で刺網漁が開発され、全国に広がったと言われています。この地のさんまは、北から南下してきているため、脂が落ちていることが特徴。「脂が落ちている?」「そんなのおいしくないんじゃない?」と思われるかもしれません。しかし、見方を変えれば、「あっさりしていて、ヘルシー」。やみつきになるさんまです。「さんまの丸干し」や「さんま寿司」などの、脂が落ちているからこそ適した食べ方があるのもこの地域ならではです。

今回は、数あるさんまの丸干しの中でも、私が特にオススメする。熊野市遊木町の濱中夫妻が作る、添加物一切不使用の「朝漁れさんまの丸干し」をご紹介します。なぜ内蔵まで全ておいしく食べられるのか? 「朝漁れ」を称することに訳があります。「夜明け前に獲れるさんまが一番や」と言うのは長栄丸の船長・濱中一茂さん。さんまは食べたプランクトンを4時前後で排出するため、夜明け前に獲れるさんまの胃袋には、食べたプランクトンが残っていません。プランクトンが胃袋に残っていると、臭みや焼いた際の腹割れの原因になるそうですが、朝漁れさんまではそういったことがなく、美しく焼き上がります。また、長栄丸は地域にさきがけて、殺菌海水装置と冷海水装置を導入し、船上の段階から、雑菌を死滅させ腐敗の速度を遅くするなど、さんまの鮮度保持や品質管理を徹底されています。

Hamanakahusaiそんな「朝漁れさんま」を全て手作業で丁寧に丸干しにするのは、奥さんの朋美さん。「おいしいだけでなく美しさも兼ね備えた丸干しを作ることがモットー」だそうです。潮風の風通しの良い「日陰」で干すことがポイントで、「日にあてると、酸化し味が落ちる上に魚体が弓なりになる」「陰干しすることで、おいしく、魚体が真っ直ぐピーンとした美しい丸干しになる」と奥さんは言います。

朝漁れさんまを最良の状態で獲ってくる旦那さん。旦那の獲ってきたさんまを最高の丸干しとして消費者に届ける奥さん。濱中夫妻のこだわりが詰まった「朝漁れさんまの丸干し」。炙るだけで手軽においしく食べられます。是非味わってみてください。(宮崎達哉)

●網元直送 長栄丸
代表者 濱中一茂
三重県熊野市遊木町31
TEL:090-3156-3195  FAX:0597-87-0778
http://www.choueimaru.jp/

※冷凍庫・乾燥機等は一切使用しないため、水揚げ・天候等によりご希望に添えない場合があることをご了承ください。

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2010年1月28日 (木)

【三重】雑煮でわかる!?三重の食文化事情

Mushiki12月30日、大晦日の前日。我が家の年末慣例行事、家族総出の餅つきをしました。朝から、かなり年季の入った蒸し器で、餅米を蒸し、電動餅つき機で餅をつきます。杵と臼で、餅つきをしたとお話したいところなのですが、悪しからず。つきたての餅で、まず、お供え用の鏡餅作り。続いて、お正月に食べる雑煮用の角餅を作ります。ひと通り餅をつき上げると、昼食です。もちろん、昼食は、つきたての餅。大根おろし、生姜醤油、ほうれん草、きな粉など様々な食材、調味料で食べるのが、我が家流です。今年も色んな味の餅を楽しみ、「いよいよ今年も終わりか」という気分になりました。
写真は、我が家の、昔から使い続けている「蒸し器」

元旦は、年末に作った餅を雑煮で食べることから始まります。我が家の雑煮は、大根、里芋が入った味噌ベースの汁に、角餅が入ったものです。この雑煮を食べると、「新年が始まったな」という思いになります。

さて、「味噌」ベースの汁に「角餅」の雑煮。みなさんの家でもこの組み合わせでしょうか?味噌でなく「すまし」の方、角餅でなく「丸餅」の方など様々なのではないでしょうか。全国各地で、様々な雑煮が食べられているようですが、各都道府県内では、雑煮のタイプは同じという場合が多いようです。餅については、一般的に関西は丸餅、関東は角餅と聞いたりします。しかし、三重県では、各地で違ったタイプの雑煮が食べられています。雑煮の分布については、図のとおり。そんなこともあってか、三重では。「あんたの家では、どんな雑煮食べるん?」と雑煮の話で盛り上がることがしばしば。

どうしてこのような状況が生まれたのでしょうか。理由は、三重が、日本列島の中間に位置し、東西文化の分岐的な位置にあるということがあるからです。江戸時代に、「お伊勢参り」が流行し、各方面から街道を通り、多くの人が三重を行き交ったことも影響しているはずです。また、南北に長く各地に異なる食文化が発生し易かったことも。

Bunpuzu私の場合、鈴鹿市に住んでいて、分布図で言うと赤色の部分に位置します。「赤色=角・みそ」となっていますので、分布図の通りです。みなさんの地域の雑煮はどのタイプでしょうか?雑煮を通して、「みなさんの地域の食文化が、三重県内のどの地域へ影響しているのか?」見えて来るかもしれません。(宮崎達哉)

三重の雑煮の分布
画像提供:学校法人大川学園理事長 大川吉祟氏

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2009年12月23日 (水)

【三重】鍋で体験!熊野地鶏、極上の旨味

Kumanojidorinabe 皆さんは、三重が誇る地鶏「熊野地鶏」をご存知でしょうか?知る人ぞ知る、赤丸急上昇中のパワーを秘めた地鶏なのです。今回は、そんな熊野地鶏をふんだんに使った「熊野地鶏鍋」をご紹介します。

熊野市駅近くにある人気の居酒屋「しんばし」でいただきました。熊野地鶏で出汁を取って塩等であっさり目に味付けした鍋スープの中に、手羽先、もも、むね肉、つくね、ツミレ、野菜類を放り込み、待つこと10分余り。熊野地鶏鍋の完成です!まずはササミをしゃぶしゃぶ風に、さっと汁にくぐらせてパクリ。スープの味付けがあっさりしているので、ササミ本来のさっぱりとした味わいに箸が進みます。店主曰く、「熊野地鶏は旨みがギュッと閉じ込められているのが特徴。本来の味を味わってもらうためにあっさりとした味付けにしています」とのこと。ツミレも十分火が通ったところでパクリ。ふわっとした食感がたまりません。もも、むね肉は、ジューシーかつ程良い歯応えがあり食べ応えがあります。

Ramenほとんどの具材を平らげ、いよいよ締めに。鶏のスープなので、ラーメンで締めることにしました。まずは、スープを一口すすると。この瞬間……「なんやこのスープは! めちゃくちゃ旨い!」 あっさりしていたスープが濃厚なスープへと変化を遂げています。熊野地鶏の肉からじわじわにじみ出た旨味が、スープを変えたとしか考えられません。熊野地鶏には肉自体のおいしさ以外にこんな魅力があったとは! まさに、眠れる熊野地鶏のパワー。肉そのものだけでなく、スープもうまい熊野地鶏鍋。この冬、一押しです。
締めのラーメン。熊野地鶏の眠れる旨味が爆発!

ここで、熊野地鶏そのものについて少し紹介。三重県原産の地鶏「八木戸」と三重県の銘柄鶏「伊勢赤どり」に、地鶏の王様「名古屋コーチン」をかけあわせたものが「熊野地鶏」です。ブロイラーのおよそ2倍の約100日をかけ、三重県熊野市紀和町の山中のゆったりした自然の中、平飼いでのびのびと育てます。飲み水にも気を使い、世界遺産熊野古道を懐に抱いた山々から流れ来る清水を鶏に与えているそうです。
 
熊野の紀和町ふるさと公社では、「熊野地鶏鍋セット」を販売しています。熊野市で見つかった新種の香酸柑橘「新姫」を使ったぽん酢しょうゆも入った、ご家庭で簡単に熊野地鶏を味わえるセットになっていますので、とってもオススメ。熊野地鶏の眠れるパワーを実感してみませんか?(宮崎達哉)

●お食事居酒屋「しんばし」
三重県熊野市井戸町386-3
TEL:0597-89-1754

●熊野地鶏の取扱店についてはこちら
http://www.pref.mie.jp/KNOKAN/HP/nousei/tokusan/img/jirori2.pdf

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2009年11月18日 (水)

【三重】あられでお茶漬け!? 三重県発のファストフード

Ochadukearare2 昔、三重県の多くの家庭では、2月の大寒の頃、あられを作るための餅つきをし、出来た自家製餅を細かく切って七輪等であぶり、塩をかけてあられにして食べていたそうです。ほんのり塩味がついた素朴な素焼きあられを人々は親しみを込めて「田舎あられ」と呼び、現代では県内のあられ業者の多くが製造販売しています。

この田舎あられはそのまま食べるほかに、一風変わった食べ方もあります。あられに塩(又は砂糖)をぱっとかけて、番茶をジャーと注ぎ、さっとお茶漬けにして食べる「お茶漬けあられ」です。三重県のファストフードと呼ぶにふさわしい手軽な食べ方で、実際、漁師や農家が忙しい仕事の合間に食べていたそうです。私自身はというと、子供の頃におやつとしてお茶漬けあられを食べていました。低塩分、低カロリーで体に優しいので、今考えると、子供のおやつにはぴったりだったのかなと思います。

そんなお茶漬けあられを商品として販売しているあられ屋さんが、川越町の片岡製菓です。「塩を振ってお茶を注ぐだけでは、ちと味気がない…」、そう考えた社長の片岡昇治さんは、田舎あられと昆布茶をセットにして発売することに。これが大成功で、評判を呼んでいます。

Ochadukearare1片岡製菓の直売所で、田舎あられに昆布茶を注いだお茶漬けあられをいただきました。昆布茶の旨みと塩味が、素朴なあられの味にマッチしてウマい!私が子供の頃に食べていたものよりもはるかにおいしいんです。とはいえ、片岡社長から話を伺ってみると、おいしさの理由は昆布茶のお陰だけではない模様。社長いわく「原材料の下処理は手を抜きたくない。もち米の粉末を仕入れてあられを作る会社もあるけど、うちは玄米の状態で仕入れて作る分だけ精米し、自社工場で粉に挽いているんです」。こだわって作ったあられあってこそのおいしさなのだと感服しました。

お茶漬けあられは「温かい、低カロリー、お腹に優しい」と3拍子が揃った料理。お昼時や仕事帰りのほか、少し小腹が空いた冬の夜は特にオススメです。そんなの本当においしいの?と思うかもしれませんが、一度ご賞味あれ。お茶に浸かって膨らんだ田舎あられのモチッとした食感。やみつきになりますよ。(宮崎達哉)

●株式会社 片岡製菓
三重県三重郡川越町高松402
TEL 059-365-3732 FAX 059-366-1811

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2009年10月23日 (金)

【三重】茶農家直営の日本茶Cafeで伊勢茶を味わい尽くす!

Senjyu松阪市にある茶農家直営の日本茶カフェ「深緑茶房」。ここでは三重ブランドにも認定されている、こだわりの伊勢茶を飲むことができます。

「伊勢茶」とは、県内で生産されたお茶の総称です。一口に伊勢茶と言っても、地域により特色があり、南勢地域では濃厚な味と香りをもつ「深蒸し茶」、北勢地域ではまろやかな飲み口の「かぶせ茶」が主流となっています。深緑茶房の茶畑があるのは、南勢部・松阪市飯南町。櫛田川からの朝霧によって、香り豊かな茶が育つ産地です。こうした恵まれた環境の中で31haの茶園において、安全・安心をモットーにお茶作りを行う深緑茶房は、東海3県の茶農家では初の「JGAP(農業生産工程管理手法)」を取得しました。また、優れた品質はもちろん、栽培・加工・小売・喫茶までの一貫経営なども評価され、県内茶業者では初となる「農林水産祭天皇杯」を受賞されています。

深緑茶房の松本社長は、茶農家の枠を越えカフェを始めた理由について「いくら良いものを作っていても、味わってもらわないことには伝わらない」「急須で淹れたお茶を飲む機会が減っているが、その素晴らしさをなんとか伝えたかった」「おいしさを最大限に引き出す淹れ方によるお茶を召し上がっていただきたかった」という思いから、開店を決意されたとのこと。カフェで出しているのはもちろん深緑茶房の伊勢茶がほとんど、スイーツも全て手作りで、お茶に合うように考えて作られています(スイーツにもお茶が使用され、とことん伊勢茶を楽しめます)。

さて、私が深緑茶房でまずいただいたのは、オススメの深蒸し茶「千寿」と、生クリームを餅皮で包み茶粉末をまぶした「茶々大福」です(写真上)。千寿1煎目は、深蒸し茶ならではの濃厚な甘みが口の中に広がり、昼下がりに良く合うくつろぎの味わい。ほどよい苦味が出てくる2煎目からは、茶々大福がぴったりの相性でした!

Okouそして、忘れられないのが、格段のおいしさ&驚きのお茶「天のしずく」です。湯呑みに入った茶葉にお湯を注ぎ、蓋をして待つこと1分。数滴しかないお茶をすするように飲むと・・・、めっちゃ甘いっ!天のしずくは、日本茶インストラクターの資格を持つ松本社長自らが、お茶の甘みが最大限に活きるようにブレンド、一滴のしずくにうま味が詰まったお茶なのです。最後には残った茶殻にポン酢をかけて食べました。ほんのり苦い茶殻とポン酢が妙にマッチ!お茶ってこんな食べ方もあったんですね。

松本社長は「カフェは田舎でキラリと光る場所でありたい」とおっしゃいます。お茶本来の味わい方だけでなく、ユニークなお茶の食べ方なども教えてくれる深緑茶房の日本茶カフェは、まさにキラリと光る場所、「日本茶を飲みながらデートとか渋くてええやんか!」と思った次第であります。(宮崎達哉)
お茶の「お香」。店内には心地よい香りが漂っています。
 
●有限会社深緑茶房
三重県松阪市飯南町粥見4209-2
TEL:0598-32-5588

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2009年9月18日 (金)

【三重】伊勢湾に浮かぶ秘境「神島」

Bentou 伊勢湾口に位置する鳥羽市・神島。「日本の秘境100選」に選ばれている美しいこの島は、三島由紀夫の小説『潮騒』の舞台にもなりました。島民のほとんどが漁業従事者で、島は年中海の幸で溢れています。今回は、その中でもとびきりおいしいタコとアラメを紹介します。

神島のタコは、身が引き締まって甘みが強いのが特長。その訳は、伊勢湾と太平洋の海流がぶつかる激しい潮の中で、エビやカニ、アワビ、サザエを食べて育つからだとか。今回伺った旅館「山海荘」さんの「潮騒弁当」には大粒のタコがゴロゴロと入ったタコ飯おにぎりが!噛むと甘みが口いっぱいに広がり、とても美味です。若旦那の山本欽久さん曰く「タコ飯は神島のおふくろの味。誰もがうちの母ちゃんのタコ飯が1番うまい!と思っとる」。山海荘さんのタコ飯も、もちろんお母さんの特製なのでした(ちなみに、山海荘さんでは、「とばーがー」に認定されている「タコカツバーガー」も食べられます。プリプリのタコをたっぷり使った洋風カツがはさまり、激ウマ!)。
写真上:タコ飯弁当。手前がメインのタコ飯、奥の鮮やかなエビはクマエビです。

Aramemaki_2さて、次は近年健康食品としても注目される海藻、アラメについて。鳥羽・志摩地域は全国シェアの約6割を占めるアラメ産地で、古くから伊勢神宮に神饌※として奉納したりしてきました。アラメはアワビのエサや、魚介類の生育場所として貴重なため、神島では資源管理が厳しく、採取できるのが全島で年間のうちたったの1時間(!)のみだそう。

そんな貴重なアラメを使った「アラメ巻き」を商品化すべく努力されている神島の海女、小久保園江さんにお会いしました。小久保さんのアラメ巻きは、8月頃に採り、2、3日天日干しした後、10月頃まで保管したアラメを用います。1日かけて釜茹でしたアラメをサンマに巻き、2日間かけてじっくり煮ると完成。すべて手作り、時間をかけて作られるアラメ巻きは驚くほど柔らかい!商品化に乞う!ご期待です。
アラメ巻き。アラメでサンマを巻いています。

山海荘の山本さんは「この島の人は皆人間くさい。大変なこともあるけど、人が支えあって生きとるこの島がやっぱり一番や!」とおっしゃいます。美しい風景や美味しい海産物もさることながら、神島一番の魅力は、なんといってもそこに暮らす人々。鳥羽駅近くの佐田浜港から船で約40分、皆さんも是非一度足を運び、秘境神島の魅力を満喫されることをおススメします!(宮崎達哉)   ※神饌・・・神社や神棚に供える供物の事

●旅館「山海荘」
鳥羽市神島町75 TEL:0599-38-2032/FAX:0599-38-2014
●神島アラメ加工研究会
鳥羽市神島町602-9 TEL:0599-38-2133
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宮崎達哉:「三重ってものすごい食べ物いっぱいあるやん!」ということが、ようやくわかってきた今日この頃・・・。三重の素晴らしい農林水産資源、料理、商品などを多くの人に知ってもらいたいと思います。おいしい食べ物や、それに関わる素敵な人などをお伝えしていきます。
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2009年8月 5日 (水)

【三重】漁師の保存食「干物」

Shiira志摩半島の南部にある志摩市浜島町を訪れました。盛大な「伊勢えび祭」で有名な町で、三重県を代表する漁村の一つです。鮮魚屋さんには、夏の浜島ならではの干物が売られていました。今回はその中のいくつかをご紹介します。

まずは「シイラ」(ハワイでは「マヒマヒ」とよばれています。最近は、この名称の方が知られているかもしれませんね)。浜島ではカツオに紛れて沢山のシイラが獲れるそう。カツオはどんどん売られていきますが、シイラは沢山余ってしまいます…、そこで干物にして地元の方たちは保存食にしてきたのでしょうか。
シイラの干物。「ガォーッ」という感じですが美味しいです。

シイラは鮮度が命のため、こだわりの漁師さんは、船の上でシイラをさばき、塩締めすることもあるそう。ひと手間かかるシイラ干しは、カツオ漁が盛んな浜島ならではの逸品です。少しモチモチした食感で脂も適度にのり、結構、美味。しかし、浜島近辺のみで売られることが多く、県内でも地元の人だけがそのおいしさを味わえる隠れた食べ物なのです。シイラ干しは8月の間、店頭に並ぶそうです。

2つめは「アブコ」。アブコはブリの幼魚で、この地域では大きさごとに「モジャコ→アブコ→ツバス→ハマチ→ワラサ→ブリ」と呼び名が変わります。アブコの大きさは30㎝前後で成魚のブリの半分以下。ハマチほど脂がのっていないので、干物に適しています。新鮮なアブコの干物は、炙る前にキラキラと背が光り、若々しさいっぱいです。引き締まった身は、干物というよりも生魚を少し炙ったような味わいです。

そして3つめは「アイゴ」です。沿岸に住み、主に海藻を好んで食べる魚です。ヒレの棘に毒があり、それは死んでも消えないため、ヒレを全部切り落としてから干物にします。少し磯臭く、刺身では敬遠されることもありますが、意外にあっさりとした味です。上身が骨からとれやすく、とても食べやすい干物でした。

最後は「ウツボ」です。ウツボは非常に生命力が強いので、女性が産後に食べると良いといわれたり、正月や結婚披露宴などの祝い膳に登場するなど、地域に密着した魚です。小骨が多く、加工するには手間がかかるので、ウツボの干物はあまり市場に出回りませんが、炙ったり、油で炒めたりすればお酒のおつまみに最適です。焼くとジュウジュウ滴り落ちてくるほど脂がいっぱい、良質なコラーゲンもたっぷりです。グロテクスな見た目に反して、女性向けの干物です。

Sengyotenmae これらの干物は、前日のカツオ漁などに混じってあがったものを、鮮魚店のお母さんがさばき、塩締めして干した手作り品ばかり。その時々で獲れた魚を地元のお母さんたちが「海の恵みの保存食」にしているのです。(大坪恵子)

鮮魚店のすぐ前が港です。

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2009年7月 1日 (水)

【三重】「伊勢のひじき」に歴史あり

Hijiki伊勢市にある北村物産株式会社さんのひじき加工工場を訪れました。寛政年間の創業、ひじき加工の老舗です。鳥羽志摩地域には昔から天然ひじきが生息しており、毎年春になると地元の漁師が一斉に刈り取りをし、空き地、駐車場、道端などそこかしこに干します。その時期の町は、まるでひじきの絨毯を敷き詰めたような光景に包まれるそうです。
⇒伊勢のひじきはとても立派です。おいしそうです。

天然のひじきは、養殖ものと違い一本一本が長く太く、中までぎゅっと身が詰まっています。伊勢ひじきの加工工程は「水戻し→蒸し→乾燥」ですが、北村さんによれば重要なのは水戻しと蒸しの工程とのこと。水戻しとは、天日乾燥により表面に浮き出た塩分を洗い流し水につけて戻すことです が、この時の戻し加減がひじきの仕上がりの品質に大きな影響を与える職人技だそうです。訪問当日は、職人さんたちが大きな水槽に入った水浸しのひじきを、手や足で感触を確かめながら揉んでいるところを見せていただきました。江戸時代から同じ技が続いているのだなと思うと、少し「じーん」とくるものがありました。その後は「伊勢方式」と呼ばれる伝統的な蒸し製法で仕上げます。他県では茹で加工が主流のようですが、伊勢では昔から蒸すことで、ひじき本来の風味を引き立てています。

Mizumodoshi北村物産さんのひじきは、さっと湯がいてポン酢をかけただけでびっくりするほどおいしく、身詰まりが良いせいかモチッとした歯ごたえで私にはたまりません。北村さんによると、「芽ひじきでもしっかりしているので、たまに長ひじきと間違われんですよ」と北村さんは笑って教えてくださいました(ひじきの茎の部分が長ひじきで、そこから伸びている部分が芽ひじきです)。
これからの季節、簡単にできるサラダとして伊勢ひじきを召し上がってもきっとおいしいと思います。(大坪恵子)

写真上は、水戻し作業をする職人さんたち。作業の途中では声に出さず、目と目で「うんうん(これぐらいでええな)」と語り合っていました。

●北村物産株式会社
三重県伊勢市東大淀町305
TEL:0596-37-2133

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2009年6月16日 (火)

【三重】海では岩牡蠣、山では伊勢茶がシーズンです

Kitagawasanはじめまして。これから三重県の食材や生産者さんの情報をお伝えしていきます。よろしくお願いします。

『料理通信』2009年3月号で格好いい姿を披露した、「的矢湾あだこ岩がき協同組合」の北川聡さん。彼が養殖している岩牡蠣が、出荷の最盛期を迎えています。岩牡蠣は「夏牡蠣」とも言われ、出荷時期は4月から7月頃まで。
写真右:岩がきの出荷作業をする北川さん

岩がきの養殖で一番難しいのは「採苗」作業とのこと。採苗は、0.3mmほどの牡蠣の幼生をほたての貝殻に付着させる作業で、通常は人工的に行われるそうですが、北川さんは「天然採苗」にこだわっています。天然の岩牡蠣が放出する幼生を付着させるのですから、的矢湾、伊勢の海を知り尽くしていなければ不可能な技術です。また、温暖な的矢湾には植物プランクトンが豊富に生息するため、日本海側の産地より1年以上養殖期間を短縮できるとのこと。「若がき」でありながら、豊かな甘みと深い味わいのある、ふっくらとした身が人気の理由です。私は生で食べるのが一番好きですが、焼き牡蠣やグラタン風もとてもおいしい。牡蠣好きの方、そうでない方にも是非食べていただきたい逸品です。

Isetyabatake一方、山間では伊勢茶の新茶がおいしい季節です。伊勢茶は、三重県で生産される緑茶の総称で、全国3位の生産量・栽培面積・生産額を誇ります。主な産地は四日市市を中心とした北勢地方と松阪市を中心とした南勢地方。特に南勢地方では、通常よりも茶葉加工時の蒸し時間が長い「深蒸し煎茶」が有名です。「蒸し時間の1~2秒の差が味を左右するため、高度な技術が必要」とは多気郡の川原製茶さん。濃厚な香りとコクが身上のお茶です。

私の1日は、夏でも朝食前に温かい伊勢茶を一杯飲み、「頑張るぞ!」と気合いを入れることから始まります。水に茶葉をいれて作る「水出し緑茶」もおいしいので、これからの季節、熱いのが苦手な方にはそちらもおすすめです。(大坪恵子)
伊勢茶畑の緑がまぶしいです。

●的矢湾あだこ岩がき協同組合
三重県鳥羽市畔蛸町164-1 TEL:0599-33-7888

●株式会社川原製茶
三重県多気郡多気町丹生1786 TEL:0598-49-3036

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大坪恵子:三重県のおいしいものは松阪牛と伊勢えびだけではありません。まだまだ知られていない美味をご紹介していきます。生産者のこだわり、現場の姿も合わせて伝えたいと思います。子供の頃から食べることが大好き、今はお酒も好きです。が、いつも体重計を気にする生活です(笑)。
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