【東京】缶づめでロシアンルーレット
■東京のアンバサダー、草薙です。食べ物のバックストーリーを知ると、何も知らないで食べるよりずっとおいしく感じます。先日、こんなにもストーリーのある食べ物は他にあるだろうか……という出合いがありました。宮城県石巻市にある「木の屋石巻水産」の缶詰です。
“開けてみないと中身がわからない”缶詰です。
かわいくも、被災の爪痕を残すパッケージ。
↑左の缶のふたには、「Guess! Who am I ?」 という文字が。なんてセンスのあるパッケージ!
木の屋石巻水産は津波で工場が全壊、多くの缶詰が流されました。しかし、本社の瓦礫の下に残ったものが掘り出され、ラベルがはがれた缶詰たちにボランティアの人達がイラストを描き、そして再び人々の食卓に上ることに。
そのいくつかが、私の元にもやってきました。
当たりならカニ缶、外れならサバ缶、珍しいところだとエイひれ缶、というロシアンルーレット状態だから、ふたを開けるときには、タイムカプセルを開けるような興奮が押し寄せました。
石巻で被災したこの缶詰が、人々の手によって再生し、そして私のところまで届いた。そんな背景に思いを馳せて感謝をしながら食べると、やっぱり、普通の缶詰よりもずっとおいしい気がしたのでした。(当たったのはサバ缶でしたが……)
缶詰と共に飲んだ日本酒は、会津若松市の宮泉銘醸「寫楽(しゃらく)」の純米吟醸(原料米は備前雄町)。甘い香りと軽い飲み口に杯が進みます。
↑左は新潟、樋木酒造の「鶴の友」。安くて旨い酒の代表選手です。(地元を意識した酒造りに徹していることから、新潟市内以外ではほとんど見ることはありません)
会津地方も震度6を超え、宮泉銘醸は貯蔵していた酒や、蔵の壁が壊れたそうです。それでも震災後の4月から出荷していたと聞くと、まだ30代の宮森義弘社長の志の高さに驚くばかり。とはいえ、ご自分たちで作られていた原料米の田んぼはどうなったのか? 来年の春に使う籾はどうしたのか? 震災後の状況を想像すると本当に胸が痛みます。
それでも、被災の状況をどんなに想像しても、それは想像の域を超えません。では、東京に住む私にできることって――? それは、被災地に思いを馳せ、おいしく、ありがたく食べて、呑むこと。それが、微力な私の復興支援だと信じています。
(『料理通信』読者アンバサダー 草薙清子)
●「木の屋石巻水産」のブログ http://ameblo.jp/kinoya-blog/
●宮泉銘醸株式会社 http://www.miyaizumi.co.jp/
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