【東京】震災後の「ソバ屋で憩う」
■はじめまして。東京の読者アンバサダー、和田和己です。第一信はご挨拶も兼ね、わが街、高田馬場の至宝「傘亭」さんのお話を。
ソバ好きのバイブル『ソバ屋で憩う』で、故・杉浦日向子さんが“特撰五店”の一軒に選んだ名店「傘亭」。ご主人のこだわりは、“食材の確かさ”です。
ソバ粉、醤油、鰹節、昆布などの基本材料から、卵、じゃこ天、島らっきょ、徑山寺味噌まで、その産地や製法を明記した一覧がカウンターに貼り出され、一目瞭然。食材の素性を可能なかぎり食べ手に公開する。それが、基本姿勢。
↑傘亭のカウンターは、いろんな説明書きを読むだけでも楽しい。
いま、そのありがたさがことさら身にしみます。震災後の某日、カウンターで宮城の銘酒「伯楽星」の杯を傾けながら、仕入れについて尋ねると、見せてくれたのが、下(↓)の仕入れ先一覧。野菜や、とくに季節の山菜などの仕入れに苦労したそうです。
原発事故によって食品の汚染が深刻化しはじめていたこの時期、ほうぼうを探し回って可能な限り納得できる品を集めたとか。傘亭イズム、健在です!! 止まぬ余震のストレスと、少なからぬ外食への不安を感じていたボクですが、この地道な努力に接したことで、ふと肩のあたりの緊張がとけ、「気分をかえて、お酒とソバで憩おう」と素直に思えたのでした。
そして、なんと、各地の放射線量一覧や、関連ニュースの新聞スクラップまで作っていたご主人。仕入れの指針を立てるために役立ちそうですね!
↑新聞のスクラップは震災発生から現在まで欠かさず続けている。
こうした姿勢のもとには、これまで実践してきた自然食の考えがあるとか。
たとえば、私たちが摂取する食品添加物は年間4kgにもおよびますが、食品を選べば1kgまで減らすことができるそうです。また野菜などは、水につける、洗う、皮を剥く、茹でるなどの処理で農薬の影響を減らすことが可能とか。こうしたノウハウを放射能への対処にも応用できるのでは、とおっしゃっていました。
↑写真のせいろのほか、そば粉の滋味を実感できる田舎、けし切りなど変わりソバもあり。うどんもうまい!
「頑固おやじってよく言われるけれど、ぜんぜん頑固じゃないですよ」
“気むずかしげな敷居の高い店”なんて思われているフシもあるけれど、実はとっても食べ手思い。ソバ屋の憩いと食の安心が共存する稀有な店、それが「傘亭」なのかもしれません。
(『料理通信』読者アンバサダー 和田和己)
●傘亭
東京都新宿区高田馬場3-33-5
TEL:03-3364-5758
12時~17時 金曜定休
↑かならず頼んでしまう玉子焼き。「大根は○○産ですけど、もし気になるようなら言ってくださいね」と声をかけてくれた。
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