【鹿児島】焼酎王国の新しい挑戦
鹿児島でお酒といえば、いわずもがな本格焼酎。飲食店でのメニューの数は、食べ物より焼酎の方が多いところも少なくありません。
さて、先日鹿児島県内の酒造メーカー等が発足した「鹿児島県本格焼酎技術研究会」が主催する利き酒会に参加してきました。新技術の紹介が目的で、参加者は各酒造メーカーの製造部門や営業の方などを中心に230名ほど。利き比べる内容は「芋の品種」「酵母」「蒸留」の3種類で、用意されていた商品は31種類。ご紹介したい内容はたくさんありますが、その中でも特に印象に残った新しい情報2つをお伝えします。
新製法の「天下無双」(新納酒造)
まずは、奄美地域でのみ生産が許されている黒糖焼酎。従来は製造工程で黒糖に水を加え煮沸していましたが、加熱せずにもろみに投入する新製法が県の研究機関で開発され、製造コストが抑えられるとともに黒糖本来の香りをより楽しめるようになったとか。口にしてみると味わいの違いに驚愕。従来の製法は飲んで息が鼻から抜ける時に黒糖の香りを感じるイメージでしたが、新製法のものは口に含んですぐ黒糖の力強い香りとほのかな甘みが広がります。試飲したのは新納酒造の「天下無双」。現在、同社と奄美大島酒造の2社が新製法の商品を販売しています。新旧の好みは分かれるところでしょうが、選択肢が増えることは大歓迎です。
そしてもう一つは新しい芋の品種「サツママサリ」。ワインに葡萄の品種があるように、芋焼酎にも様々な芋の品種があるのをご存じでしょうか? 現在の主流は黄金千貫(コガネセンガン)。3Mと称される人気銘柄「森伊蔵」「村尾」「魔王」にも使用されています。芋本来の香りと甘みが特徴でアルコール収量も高く、現在最も焼酎に適した品種といわれていますが、腐れやすいことと表面の溝が深く土の洗浄などに手間がかかるなど、改良すべきところもありました。新品種「サツママサリ」は、黄金千貫に近い味と香りのバランスを持ちつつ、先述の課題を改善した期待の品種なのです。現在一部のメーカーと研究機関が中心となり開発と普及に取り組んでいます。
真剣に吟味する参加者
試作品の焼酎を試飲したところ、黄金千貫とよく似ていますが、より甘みが強い印象。微かに栗っぽい感じも。これから少し時間をかけて鹿児島の土地との相性を検証するとか。どうか鹿児島の土に愛されますように。数年後、私たちが口にする芋焼酎のほとんどはサツママサリになっているかもしれません。(杉村輝彦)
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