【三重】春を告げるイカナゴ漁
3月3日に解禁となった伊勢湾のイカナゴ漁。天気の良い日は、鈴鹿市から津市の浜辺には、水揚げされたイカナゴが天日干しされています。我が家の食卓に、イカナゴの天ぷらや卵とじが並ぶのもこの時期ならでは。鈴鹿市で生まれ育った私にとっては、まさに春の味覚です。
浜辺で天日干しされるイカナゴ(奥に見えるのが加工場)
イカナゴは、色々な呼び方をされる少しややこしい魚です。私の地域では「コウナゴ」と呼ばれるのが普通ですが、九州では「カナギ」と呼ばれ、稚内では成魚を「オオナゴ」と呼ぶようです。伊勢湾を境に東日本では、イカナゴの稚魚を「コウナゴ」と呼ぶことが多いようです。イカナゴは、冬眠ならぬ「夏眠」をするという変わった性質があることも特徴です。暑さが苦手なため、夏は砂の中で寝てしまうらしく、夏眠期間の約半年間は、全くエサを食べずに過ごすとのことです。
さて先日、三重県津市にある白塚漁港がイカナゴ漁で賑わっていると聞いて、現場に突撃。セリや水揚げの様子を見てきました。朝10時頃、イカナゴを積んだ漁船が続々と入港。次々とセリにかけられ買い取られたイカナゴは、漁港近くに立ち並ぶ加工場に運ばれます。そして鮮度の良いうちに塩茹でされ、天日干しに。以前は、茹でる時に、青色を付けるための着色料を加えるのが普通だったそうですが、近年は、添加物の少ないものが好まれるため、塩だけで加工する業者がほとんどだそうです。
白塚漁港の漁師さんに「今年のイカナゴ漁はどうですか?」と聞いたところ「今年はまずまず。3月いっぱいは漁が続けられると思うわ」「去年はたった3日やったからな…」と仰っていました。伊勢湾のイカナゴ漁は、昭和50年代前半に大不況期を迎え、多くの漁業者が壊滅的な打撃を受けました。原因の一つは、乱獲。これを契機に、三重・愛知両県の漁業者や行政が協力して資源を守り、回復する取り組みが始まりました。今では、漁の解禁前にコウナゴの資源量を把握し、漁獲量の上限を決めて漁が行われています。調査結果によっては、漁が出来るのが3日間だけということも・・・。しかし、このような取り組みの結果、近年では資源回復の兆しが見えてきているそうです。
春先には「もう十分」という程食べられることが普通と思っていたイカナゴ。限りある貴重な春の恵みをこれからも大切にしていきたいものです。(宮崎達哉)
セリの様子(仲買業者さんが品定めしています)
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