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2009年12月 4日 (金)

【ゲスト/東京】我が家風、あっさりおでん

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●池田牧僖子:「マルイ漬物」三代目
ぬか漬け専門店の長女として生まれ、27歳の時に美術商勤めを辞し、家業を継ぐ。特別栽培米の糠、有機栽培・特別栽培の野菜を使い家族で丁寧な漬物作りを続ける。ぬか床の販売にも力を入れ「我が家のぬか床」育成を勧めるほか、カルチャーセンターなどでぬか漬け講座も受け持つ。
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Oden 「うちは、おでんは生姜醤油で」と言うと、皆ふしぎそうな顔をします。

社会人になりたての頃、初めて外で御馳走になった「おでん」は、しっかりと味付けされ黒々とした汁、そして鼻孔の奥まで届くほどツーンと効いた練辛子。「我が家風」との違いに驚かされました。両親は兵庫県生まれで、姫路に依拠するところが多い我が家の食卓。おでんといえば、酒・塩・淡口醤油・味醂で味をととのえた出汁で具をあっさりと炊き、生姜醤油につけながら頂くのが定番です。
丁寧に下拵えをし、あっさりと生姜醤油でいただく我が家のおでん。翡翠色の銀杏は見目もよく、季節の恵みを感じさせます。

漬物屋のせいか、大根と米糠はふんだんにあります。木枯らしが舞えば大根は糖度が増しておいしい季節。新鮮な里芋と銀杏をいただいたので、今年もおでんを拵えました。
 
昆布と鰹節で出汁をひくと同時に、大根を米糠でゆがく。じゃが芋・里芋・蒟蒻は下茹でする。殻を割り熱湯で転がして薄皮をむいた銀杏は細串にまとめ、霜降りしたぶつ切り蛸は串刺しに。油揚げには玄米餅を入れ干瓢で縛って巾着包み。さつま揚げは熱湯でさっと油を切る。卵を茹でる鍋の上段ではキャベツを蒸してロールキャベツも拵えよう(とはいえ冷蔵庫にはお肉がない…、今回はしらたきを詰めて手軽でヘルシーなキャベツ巻になりました)。そして、出汁を調味しととのえる…。このあたりで、台所にたちこめる匂いにつられて覗く家族の顔が見えたら、お願いをひとつ託します。「今夜はおでんだから、たくさん生姜をすっておいてね」。

「菜蔬(さいそ)は最も大根を好んだ。生で食うときは大根おろしにし、烹(に)て食うときはふろふきにした」(森鴎外『渋江抽斎』より)。摂生に心を用いた抽斎らしい簡素な食べかたです。抽斎の妻、五百(いお)に会いたくて、時々想い出したように開く本。食いしん坊の血が騒ぎ、食べ物に対する記述に今夜も目が留ります。明日は大根に柚子味噌をつけてみよう。師走に入り、新酒も届くこの時季、旬の恵みを存分に戴きたいと思います。(池田牧僖子)

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