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2009年7月 3日 (金)

【東京】魅力的なレストラン空間

1「建築家ってオシャレなレストランをたくさん知ってるんでしょうね」というようなことを聞かれることがよくあります。
確かにインテリアの専門誌で紹介されたようなお店にはそれなりに興味があって、デザインを見るために食べにいくことも実際にあるし、そういうのも嫌いではありません。でも、おいしい物を食べたい時や、大切な人を誘って食事をしたい時なんかに、そういった面白いデザインの、いわゆるオシャレなお店を良く利用するのかと言えば、そんなことは全然ないんですね。
では、果たして自分はどんな基準でレストランを選んでいるのか?
去年行ったイタリア旅行でなんとなくそれが分かったような気がしました。
⇒眼下にベルガモの街を見渡すことのできるレストラン。

それはミラノ郊外のベルガモ・アルタという、中世の城壁に囲まれた街のレストランでランチを摂った時のこと。
そのレストランで感じたのは、建物と使う人達がすごくしっくり馴染んでいるなということでした。洗練されたインテリアの中、フロアで働く人たちの無駄のない動きや接客態度、行き届いた掃除はもちろんのこと、食器のしまわれ方や、花や小物の飾り方。食事を楽しむ人たちの雰囲気。背伸びした感じも窮屈な感じもなく、いろいろな瞬間に建物と使う人の関係がぴったり重なり合う幸せな関係を感じ取ることができました。
ああ、魅力的なレストラン空間に大切なのはデザインと使う人達の気持ちの通じ合いなんだなと思いました。
そんなことを考えながら自分が好きで良く行くレストランを思い起こしてみると、それらはデザイン自体は全く普通なんだけれども、確かにそんな幸せな関係が絶妙なバランスの中に成り立っている気がしました。僕は料理の専門家ではないので、提供される料理にどのような思いが込められているのか、本当に深い部分までは理解できていないと思うんですが、デザイン自体に斬新で面白いことがなくても、親密でズレのない空気感の漂う空間を保って仕事をする人たちの料理は、信頼できるなという感じがします。

2これってよく考えてみればレストランだけに言えることではなくて、住宅をはじめ、建築全般に当てはまることなんですね。どんなにすばらしいデザインの住宅でも住み手との間にズレがあると、そこに幸せな空間は生まれないんです。
僕たち建築家は、建築そのものというよりは、建築と使い手との幸せな関係をデザインしていくべきなんだな。おいしいピザをほお張り、ベルガモの街を眺めながらそんなことを考えたのでした。(金子広明)

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