【北海道/番外編】「世界料理学会in HAKODATE」レポート-後編
函館で開催された料理人たちによる“学会”レポート、続編です。
[第2日目]
2日目は「地方レストランのあり方」というテーマのトーク・セッションからスタート。「レストラン マッカリーナ」(北海道・真狩村)の菅谷伸一氏、前述した山崎氏、そして今回の学会の実行委員長である「レストラン バスク」(北海道・函館)の深谷宏治氏が登壇しました。「確かに東京のレストランと比較すればハンディはある。しかし、食材の恵みに勝機を見いだし、風景を含めての料理という考え方を持って、新・郷土料理を自らの手で生み出せるという誇りが我々にはある」という深谷氏の言葉に、大きな拍手が起こりました。深谷氏はここ数年、多数の飲食店を巻き込み函館の街に年2回の「バル街」を定着させ、「これからの料理界にドラスティックな変化をもたらす何かが、この催しをきっかけに生まれて欲しい」とこの学会を立ち上げました。62歳の挑戦とバイタリティには素直に感服してしまいます。
写真上は閉会式の様子。マイクを持っている方が深谷氏。
「六雁」(東京・銀座)秋山能久氏による芸術的で美しい料理のプレゼンテーション、「フィフティー・スリー」(シンガポール)マイケル・ハン氏、「ル・プティコション」(北海道・函館)坂田敏二氏の発表の後、プログラムは調理実況中継へ進み、「ル・ミュゼ」(北海道・札幌)の石井誠氏と前述の菅谷氏が惜しげもなくレシピを公開しながら、目の前で料理を仕上げていきました。そして、今回最も遠くから参加したという「レストラン・ドド・クラブ」(アルゼンチン・ブエノスアイレス)大野剛浩氏の発表に続いて、「アロニア・ド・タカザワ」(東京・赤坂)高澤義明氏が登場。理にかなっていながらも超独創的な作品(料理)に、この日何度目かの腰抜け状態になりつつ、発表プログラムはすべて終了。
写真を使い説明する“学会”。シルエットは「アロニア・ド・タカザワ」高澤義明氏。
エンディングトークは、「ザ・ウインザーホテル洞爺」料理顧問であり『料理通信』編集顧問である齋藤壽氏が登壇。この2日間の全発表を総括しながら「すごくレベルの高いイベントになった。みんな自分の悩みを持ちながらもアクティブに動き始めるきっかけになることを願う」と締め括られました。
[まとめ]
普段は調理場で動き回っているシェフ達が、学生のように8時間以上も座りメモを取った2日間。皆、疲労が顔に出ていました。しかし疲れた顔の中のギラギラした目、それが大変印象に残ったのも事実です。聴講した「コートドール札幌」の中本料理長は「その料理観を尊敬しているシェフの話は大変参考になりました。いつも調理場にいるとなかなか他のシェフ達と接点が持てないけれど、その面でも刺激的でしたね。函館という地方都市で開かれたことにはすごい意義があるんじゃないかな? 深谷さんの人間力はすごいですね」と語り、初日に発表した山田チカラさんは「料理の学会なのに市民が来ていることに驚きました。料理人じゃないのにメモを取って聞いているし、質問もする! 感動しました。函館の人はすごいね!」と。
以上、すばらしい体験ができた2日間だったことをご報告します。(大槻正志)
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