【北海道/番外編】「世界料理学会in HAKODATE」レポート-前編
去る4月20、21日に、函館で開かれた「世界料理学会」。スペイン・バスク地方サンセバスチャンの「最高美食会議」をモデルに初開催された、料理人たちによる“学会”に密着、濃厚な2日間をレポートします。
[第1日目]
「技術を共有し合うことで料理は進化するのだから学会には大きな意義がある」というオープニングトークの後、トップバッターとして発表に立ったのは「山田チカラ」(東京・麻布十番)の山田チカラ氏。「エル・ブジ」での修業経験を持つ彼の先鋭的、実験的な料理に参加者は早速くぎ付けに。調理場と同じくこの学会も真剣勝負の場という緊張感が生まれ、それは閉会まで続くことになります。
続いて、「レストラン・コーコッチャ」(スペイン・サンセバスチャン)のダニエル・ロペス氏、「レストラン山崎」(青森県・弘前)の山崎隆氏、「グリーンヒルズ草庵」(神奈川県・箱根)の末長直健氏のレシピが惜しみなく発表され、「ル・マンジュ・トゥー」(東京・新宿)の谷昇氏が「我々は仲間になろう! 仲間の数は力だ。皆で料理人の地位向上に努めよう!」と檄を飛ばしました。また氏は「自分の“起点となる人”を持とう。僕は以前の『専門料理』も、今の『料理通信』も、最後のページから読む。そこには、齋藤壽さん(料理通信編集顧問)の言葉があるから。その文を読み、自分は今、横道に逸れていないかを自問自答している。齋藤さん、北海道に引っ込んでないで早く東京に戻って来てください!」と発言しました(翌日のエンディングトークで齋藤さんは「昨日は谷さんの褒め殺しに合いました」と語る 笑)。
続いて「オステリア・デル・ボルゴ」(青森県・八戸)の滝沢英哲氏が、生産者との結びつきの大事さを語り、そして「日本料理 龍吟」(東京・六本木)の山本征治氏が「伝統的な鱧の骨切りに疑問を持った私は、まず鱧をCTスキャンにかけました」と語ると場内には笑いが…。しかし、CTスキャンで鱧の複雑な骨の構造を知り、科学を取り入れることでまな板や包丁を入れる角度まで計算し尽くし、料理の技術と味わいを進化させようという、おいしさのためには一切の妥協をしない山本氏の姿勢が語られるにつれ、参加者のシェフ達が身を乗り出し始めた、そのことが印象的だったのでした。
第1日目は、北海道大学大学院水産科学研究院の今野久仁彦教授による「タンパク質化学で説明する料理方法」というアカデミックな発表により終了。その後、一般市民を含め500人が参加した記念パーティでは、それぞれのシェフによるピンチョス・スタイルの料理が出され、しかしそれは一瞬の内に胃の中に消えていったのでした。
(明日に続く/大槻正志)
記念パーティーであっという間になくなったピンチョス・スタイルの料理。
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