【新潟】凛とした空気の中で
当地には、まだ古き時代の格式やしきたりなどが残っていますが、特に年末年始は、その寒さと普段の生活とは随分と違った習慣や食によって、改めて凛とした空気を感じる数日間となります。その一例として、我が家の大晦日は、男衆(家長もしくは長男)の手によって、しめ縄や掛け軸の準備から始まる「正月様」を飾り、夜には神様とお地蔵様のお膳を供え、家長から順に拝んだ後、床の間のある奥座敷でお神酒をまわして年越し納豆を食べる、というのが習慣として続いています。
準備が整った正月様。向かって左のお膳が神様用で右がお地蔵様用。神様には鮭が供えられますが、お地蔵様は精進料理となっています。
元旦は、茶の間の囲炉裏に炭をおこし、男衆が汲んだ若水で雑煮を作り食べるのですが、家の敷地内にあった井戸もなくなり、炭での煮炊きも最近は敬遠気味。それでも、雑煮は我が家の放し飼い鶏の肉と椎茸で出汁をとり、人参、牛蒡、ねぎ、油揚げ、からとり芋の茎などが入った昔ながらの醤油味。副菜もぜんまいの煮物や赤かぶ漬け、鮭の塩引き、わさび漬けなどといった地元の食材を使ったシンプルなものばかりです。
そして七草。世間一般には七草がゆで胃腸を休めるといった風習ですが、こちらは「あんこ餅」。神様にお供えした餅を切り分け焼いたものを、小豆餡(つぶあん)に入れていただくのです。こうして独特の空気感とともに、これまでもそしてこれからも親から子へ、自分が生まれ育った地の習慣や食といった「文化」が伝えられていくのです。(富樫直樹)
お供えの白い餅以外にも、栃の実で作った「栃餅」も入れるので、栃の香りと苦味がほんのりと感じられ、これが小豆餡の甘さと溶け合い絶妙な大人の美味しさです。奥の魚は塩引き鮭です。
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